こんにちは、クラウド会計の開発チームでスクラムマスターをしているasatoです。
新しいチームにジョインするのって、ドキドキしますよね。新しい環境、新しい人々、そして新しい課題。それぞれのチームが直面している問題は異なりますが、スクラムマスターとして私たちが共有する目標は一つです。それは、チームの有効性を最大化し、素晴らしいプロダクトを生み出すこと。
私は今年の1月にマネーフォワードにジョインし、今のチームでスクラムマスターとして働くことになりました。事前に聞いていたチームの情報は以下の通りです。
- プロダクトマネージャー、UI/UXデザイナー、複数のバックエンド/フロントエンド/QAエンジニアから成る
- 従来のプロジェクトの進め方に課題感があり、4ヶ月前からスクラムを実践中
ここで一つの質問です。もし、あなたがスクラムマスターとして新しいチームにジョインしたとしたら、最初に何をしますか?この問いに対する答えは人それぞれかもしれませんが、このブログでは私が実際に行った「情報収集」と「改善の方向づけ」について共有します。
なぜ「情報収集」と「改善の方向づけ」なのか
スクラムチームの責任について、スクラムガイドでは「スクラムチームの有効性に責任を持つ」と書かれています。噛み砕くと「チームをよりよくする人」です。
では、どうすればよりよくなるのでしょう?ここで「改善のカタ」を紹介します。
画像出典:The Improvement Kata | The Toyota Kata Website
改善のカタでは、以下の手順を踏むことを推奨しています。
- 目指したい方向性や課題を知る
- 現在の状況を把握する
- 次の目標条件を定める
- 次の目標に向けて実験を繰り返す
スクラムチームにジョインしたスクラムマスターがまずやることも一緒です。目の前のわかりやすい課題に飛びつくのではなく、まずは「理想」「現状」「そのギャップ」を知り、「改善の方向づけ」をするのです。
やること①-1:観察による情報収集
では、理想と現状とそのギャップを情報収集していきます。
画像出典:ScrumMasterWay - スクラムで卓越した成果を収めグレートスクラムマスターになるための方法
ScrumMasterWayでは、スクラムマスターのコアコンピタンスとして「観察する」がありますね。チームにジョインしてすぐは、まずチームの現状を正しく把握するために「観察」を活用することを心がけています。
では何を観察するのでしょうか?私が観察するものは大きく分けて3つです。
- 作成物
- スクラムイベント
- 日々のコミュニケーション(メンバー間の関係性)
それぞれについて紹介します。
作成物
スクラムでは「プロダクトバックログ」「スプリントバックログ」「インクリメント」の3つの作成物が定義されています。これらの作成物が存在し透明性が確保されていることで、チームは検査と適応ができるように設計されています。この3つを含めたチームの作成物は、チームの現状を把握するにはうってつけの観察対象です。
私がよく観察する作成物と観点を紹介します。
作成物 | 観点 |
---|---|
共通 |
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プロダクトバックログ |
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スプリントバックログ |
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インクリメント |
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完成の定義(DoD: Definition of Done) |
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管理ツール |
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多くのチームではプロダクトバックログを管理するためにJIRAやAsanaなどのツールが使われていると思います。このようなツールは自由度が高く、スペースを気にする必要がないので煩雑になりやすいです。便利なツールがチームの集中を阻害していないかも観察対象です。
スクラムイベント
スクラムイベントからも色々なことがわかります。透明性を実現した作成物やデータを元に検査・適応や意思決定をしていく営みが機能しているかを観察します。 イベントではメンバー間の関係性やコミュニケーションスタイルなども把握できます。これらは改善の方向づけをする上でも非常に有用です。
イベント | 観点 |
---|---|
共通 |
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スプリントプランニング |
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デイリースクラム |
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スプリントレビュー |
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スプリントレトロスペクティブ |
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リファインメント |
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日々のコミュニケーション
日々のコミュニケーションも重要です。チームではコミュニケーションツールとしてSlackを利用しているので、Slack上でのやり取りを観察することで現状を把握できます。
観点は以下の通りです。
- 雰囲気は良いか、楽しそうか
- 率直なコミュニケーションを取れているか
- デイリースクラムを待たずに適切なタイミングで相談や共有が行われているか
- スプリントレトロスペクティブを待たずに適切なタイミングで改善が行われているか
- 職能が違うメンバー同士でもコミュニケーションが起きているか
- スクラム、アジャイル開発、会社のバリューやカルチャーを体現したコミュニケーションが取れているか
ちなみにマネーフォワードには「User Focus」「Tech & Design」「Fairness」のバリューと「Speed」「Professional」「Teamwork」「Respect」「Evolution」「Fun」のカルチャーがあります。詳しくは下記で公開されています。
やること①-2:対話による情報収集
ここまでは主に「観察」をしてきましたが、一人一人と対話することでより解像度が上がったり、新たな気づきを得ることがあります。 個人個人との対話ではチームだけでなく個人にもフォーカスして話をします。また、スクラムマスターについても認識や期待を揃える機会にしています。
私は以下の4つのトピックについてそれぞれのメンバーと雑談の時間を設けました。
- スクラムマスターに期待していること、スクラムマスターとして期待してほしいこと、してほしくないこと
- あなたから見てこのチームのGoodなところ、Moreなところ
- あなたは今後どうなっていきたいか
- あなたがこのチームに期待していること
まず信頼関係を築くことが大事なので、ティーチングやコーチングよりもその人のことを知ることや自分のことを知ってもらうための対話をします。順番の通り、自分のこと、チームのこと、相手のことと話題を切り替えていくことで、相手も自分のことを話しやすくなるような工夫をしています。
全員と1対1で対話することで、様々な観点からチームの理想と現状を知ることができます。私は特に個人がどう感じているかを大切にしたいと考えているため、ここでの対話の結果は今後の改善の方向性の検討に大きな影響を与えました。
やること②:改善の方向づけ
ここまでを1,2週間で実施します。1~2スプリントくらいです。
観察と対話からわかったことは以下のようなことでした。
- 率直なコミュニケーションとまではいかないが、関係性は良好でチームに満足しているメンバーが多い
- スクラムにポジティブだが、ちゃんとスクラムを実践できているのか不安なメンバーが多い
- プロダクトバックログは職能ごとのTodoリストの集合になっている
- スプリントバックログで、1スプリント中に完了しないアイテムが多い
- 完成の定義や受入基準が明確でない、または煩雑で透明性が低い
- 一方で、スプリントごとに何かしらインクリメントされており、ステークホルダーからも評価されている
- ベロシティやアウトカムの計測は行なっておらず、データインフォームドな意思決定はできていない
ここから私は次の改善の方向として「タスクを完了させられるチーム」を掲げました。 もちろんこれが全く正しいわけではなく、これから新たにわかること・自分が行動してわかることがあります。でも、その都度また改善の方向づけをするのが経験主義ですよね。
目標を定めたら、その目標に向けてチームをリード&サポートしていきます。その話はまたいつか。
まとめ
スクラムマスターとして新しいチームに参加する際には、チームの現状を正確に理解し、適切な改善の方向づけを行うことが重要です。このブログで紹介したプロセスは、以下のステップで構成されています。
- 情報収集:チームの作成物、スクラムイベント、日々のコミュニケーションを観察し、メンバーとの対話を通じて理想と現状のギャップを把握します。
- 改善の方向づけ:観察と対話から得られた情報を基に、チームが直面している課題に対して具体的な改善目標を設定し、それに向けたアクションプランを立てます。
私たちの目標は、単にスクラムのプラクティスを実行することではなく、チームが自己組織化し、持続可能なペースで価値を提供し続けることができるようにすることです。このブログが、あなたのチームでのスクラム実践において、有益な洞察やアイデアを提供する一助となれば幸いです。
スクラムマスターとしての旅は、常に学びと成長の連続です。今日の挑戦が、明日の成功への一歩となることを忘れずに、一緒に前進しましょう。
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