こんにちは、Money Forward Lab所長の北岸です。
私たちは「まだ世の中に存在しない未来のプロダクト」を研究開発する組織です。
ここでは研究者一人ひとりの専門性と個性を最大限に活かしながら、ユーザーの「困りごと」を見つけ、解決することに挑んでいます。
Missionは、「お金の仕組みを解き明かすことで、人々の人生に笑顔と驚きを届ける」ことです。そのために、私たちは2〜3年先を見据えた研究を続けています。
Money Forward Labの設立の背景や目指すゴールを詳しく知りたい方は、以前の記事をぜひお読みください。
今回は「Money Forward Labで働く研究者がどのように課題に向き合い、未来を形にしているのか」をお伝えします。
研究テーマの始まりは「Pain」から
Money Forward Labの研究はすべて、ユーザーのリアルな課題(Pain)を起点にスタートします。
研究者自身がプロダクトに触れ、PdM(プロダクトマネージャー)やエンジニアと議論を重ねたり、時には税理士事務所でヒアリングをしたりします。
具体的には以下のような流れになります。
- 見つけたPainをテンプレートに沿って構造化する
- Demand(理想的な製品概念と仕組みの仮説)を定義する
- Gap(既知の技術方式の限界)を示す
- Break Through(限界克服のための仮説)へと発展させる
- 問い(Research Question)に落とし込む
言い換えれば、あなたの問いがそのまま研究テーマになる環境です。
第20回言語処理若手シンポジウムにて24年新卒のZhangさんがポスター発表をした内容を例として紹介します。
金融サービスのように専門知識が要求される顧客対応では、質問の曖昧さが大きな負担となっており、全セッションの約33%が曖昧さの解消作業に費やされるなど、顧客とサービス提供者の双方に過度な認知的負荷が継続的に発生しています。
これを分析・発見した研究者は、「曖昧な質問を専門知識や関連法規に即時にグラウンディングすることは可能か?」という問いをたて、汎化が期待できる研究テーマをいくつか立案していきます。(YANS2025に参加しました!より)
- Intention Prediction for Incomplete Queries
不完全あるいは曖昧な質問に対して、顧客の質問意図を予測できるか? - Automatic Necessary Information Collection
解決に必要な不足情報を自動的に収集・提示できるか? - Structure-aware Retriever
顧客の曖昧な質問を構造的に解釈して適切な知識にマッピングできるか?
新卒入社の場合、このような探索活動は、先輩研究者のサポートを受けながら半年〜1年かけて実施しています。
会計や財務のことはちょっと苦手かも、という方でもこの活動によって、事業部門との関係性や信頼関係を構築し、プロダクトやビジネスへの理解を深めていくことができます。
文化と成長環境
Money Forward Labには以下のような文化、環境があります。
- 挑戦を恐れない
失敗も全員で共有し、次に活かす文化があります。 - 社会に直結する研究
常にユーザー課題を起点に、社会実装を見据えて進めます。 - 研究者が主役
テーマ選定の裁量を持ち、自由度高く動ける環境です。
得られるのは、単なる研究スキルではありません。
- 会計・財務・人事労務など社会システムを深く理解できる
- アイデアを社会実装までつなげられる
- 組織の壁を越えて動きながら、自分が発見した問いを形にできる
銀行やカード、証券など約24,00の金融関連サービスと連携した国内有数の金融プラットフォームが持つデータと研究者の探究心、その組み合わせが、教科書にはない問いと答えを生み出すことにつながります。
どんな人がいるの?
以前、2名の新卒のメンバーがインタビューに応じた記事が公開されています。
Zhangさん(FY24秋新卒)
Money Forward Labでのやりがいと挑戦:研究開発職新入社員インタビュー
2024年新卒秋入社のZhangさんの、「Money Forward Labで感じている『やりがい』と『挑戦』」についてのインタビュー。
技術力を重視する選考、テーマ選定の裁量の自由度、ビジネス価値を意識した研究、研究成果の実プロダクトへの応用などが語られています。
Wangさん(FY25春新卒)
言語処理からAIと金融の未来を切り拓く挑戦:研究開発職25年新入社員インタビュー
2025年新卒春入社のWangさんの、「RAGを使ったメール自動生成、金融分野エージェントの試作などへの挑戦」についてのインタビュー。
チームでの議論、研究成果の実装経験などがやり甲斐として語られています。
一緒に未来をつくろう
私たちが目指す「Autonomous BackOffice(バックオフィスの自律化)」は、車の自動運転と同じく「ぶつからない」ことが本質です。
車の自動運転では、センサーやAIを活用して周囲の状況を常に把握し、事故や危険を未然に防ぎながら安全に目的地まで運転を進めます。
同じように、バックオフィスの自律化も、経理・財務・労務・人事といった業務で発生する膨大な取引や手続きをシステムが自律的に監視・判断し、ミスや不整合を防ぎながら処理を進めていくことを目指しています。


つまり「人間が全てを逐一判断しなくても、安全かつ効率的に業務が進む」という点で、自動運転とバックオフィス自律化は同じ思想に基づいています。
私たちは「人間がバックオフィスを運営するのは無謀だ」と言われる未来を、本気で描いています。
知的探求心と、社会を変える情熱を持っている方。挑戦を楽しめる方。
Money Forward Labは、そんなあなたを仲間として大歓迎します。
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2027年新卒採用 研究開発職 本選考エントリー

これまでの活動の記録
国際会議・論文誌
[1] ”Who Spent Their COVID-19 Stimulus Payment? Evidence from Personal Finance Software in Japan”, Covid Economics: Vetted and Real- Time Papers, Issue 75, p6-29 (2021)
[2] "Extending TrOCR for Text Localization-Free OCR of Full-Page Scanned Receipt Images", Proceedings of the IEEE/CVF International Conference on Computer Vision (ICCV) Workshops, 2023, pp. 1479-1485
[3] "Sub-Table Rescorer for Table Question Answering", In Proceedings of the 2024 Joint International Conference on Computational Linguistics, Language Resources and Evaluation (LREC-COLING 2024), pages 15422–15427, Torino, Italia. ELRA and ICCL.
国内会議・シンポジウム
[1] ”FAQ チャットボットの誤りタイプの類型化と自動分類の検討”, 言語処理学会 第29回年次大会 発表論文集 (2023年3月)
[2] "家計簿データに基づく生活スタイル分析", 2023年度人工知能学会全国大会(第37回)
[3] "財務諸表と仕訳データを用いた増減要因の説明文生成の初期検討", NLP若手の会 (YANS) 第18回シンポジウム プログラム(2023)
[4] ”テーブル質問応答タスクのための sub-table rescorer”, 第257回NL研究発表会
[5] "LLMの出力結果に対する人間による評価分析とGPT-4による自動評価との比較分析", 言語処理学会 第30回年次大会 発表論文集 (2024年3月)
[6] "大規模言語モデル houou (鳳凰): 理研 ichikara-instruction データセットを用いた学習と評価", 言語処理学会 第30回年次大会 発表論文集 (2024年3月)
[7] "Retrieval-augmented generation に基づくカスタマーサポートにおける返信メール自動生成の検討", 言語処理学会 第30回年次大会 発表論文集 (2024年3月)
[8] "家計簿データに基づく任意の生活スタイルに対応したユーザ抽出手法の検討", 2024年度人工知能学会全国大会(第38回)
[9] "Intermediate Direct Preference Optimization", 第260回NL研究発表会
[10] "大規模言語モデルを用いた生成による企業の業種体系の拡張", 言語処理学会 第31回年次大会 発表論文集 (2025年3月)
[11] "企画委員会だより〔第2回〕人工知能セミナーの再興を振り返って", 一般社団法人 人工知能学会, 人工知能, 40巻, 2号 (2025年3月)
[12] "Understanding the Limits of RAG in Real-World Customer Support: A Data-Driven Perspective", NLP若手の会 (YANS) 第20回シンポジウム プログラム(2025)
書籍
[1] "ANOVA with Dependent Errors", Springer, July 2023
[2] "事例でわかるMLOps 機械学習の成果をスケールさせる処方箋", 講談社 (2024年9月)
Preprint
[1] "Extending TrOCR for Text Localization-Free OCR of Full-Page Scanned Receipt Images", arXiv, December 2022
[2] "Automatic Detection and Rectification of Paper Receipts on Smartphones", arXiv, March, 2023
[3] "Large Language Models for Simultaneous Named Entity Extraction and Spelling Correction", arXiv, March, 2024
[4] "Intermediate direct preference optimization", arXiv, August, 2024
OSS
[1] houou-instruction-7b-v1, 2023/12/6
Link: https://huggingface.co/moneyforward/houou-instruction-7b-v1
[2] houou-instruction-7b-v2, 2023/12/22
Link: https://huggingface.co/moneyforward/houou-instruction-7b-v2
[3] houou-instruction-7b-v3, 2024/3/11
Link: https://huggingface.co/moneyforward/houou-instruction-7b-v3
[4] jp-stopword-filter, 2024/11/24
Link: https://github.com/BrambleXu/jp-stopword-filter
プレスリリース
[1] 2019-03-06
データを利活用することで、お金に対する不安や課題を解決する“Money Forward Lab”設立
[2] 2021-04-14
特別定額給付金が家計消費に与える影響に関する研究論文を発表
[3] 2021-06-09
シミュレーション機能を強化し自動消込の精度を大幅に向上
[4] 2021-11-29
『マネーフォワード クラウド債務支払』、「請求書メール自動取込機能」を提供開始
[5] 2022-03-30
日本銀行への研究協力に関するお知らせ
[6] 2023-09-26
Money Forward Lab、理化学研究所と大規模言語モデルに関する共同研究を開始
[7] 2023-12-06
Money Forward Lab、理化学研究所との共同研究による日本語インストラクションデータで学習された 大規模言語モデル(LLM)を公開
[8] 2024-05-17
Money Forward Labによる、質問応答システムにおけるテーブル からの情報抽出手法(Table Retrieval)に関する論文が 自然言語処理分野の国際会議「LREC-COLING 2024」に採択されました
[9] 2024-06-20
Biz Forward、中小企業向けオンライン型ファクタリングサービス『SHIKIN+』で「AI仮審査」を開始
[10] 2024-07-19
『マネーフォワード クラウド会計』、『SHIKIN+』利用時の調達目安額を表示する機能を開始
