はじめに
お久しぶりです、マネーフォワード ID 開発チームの @nov です。
毎年のようにパスキーまわりの新機能が発表される WWDC の季節も近づいてきた今日この頃、パスキー愛好家の皆様はいかがお過ごしでしょうか?
今年の4月には、iOS 18.4 がリリースされ、ついに ASWebAuthenticationSession で Passkey Autofill が動かないバグ も修正され、iOS Native App でのパスキー利用率が一気に改善されました。
WWDC 前に、その辺りの影響も含めて、マネーフォワード ID でのパスキー利用状況についてまとめておきます。
パスキー登録状況 @ 2025 May.
では、恒例の数字を見ていきましょう。
2025年5月現在、マネーフォワード ID には全部で約 1,800,000 個のパスキーが登録されています。
- Vol.3 時点では 320,000 個
- Vol.4 時点では 750,000 個 (+430,000)
- Vol.5 時点では 1,150,000 個 (+400,000)
- Vol.6 時点では 1,185,000 個 (+35,000)
- Vol.7 時点では 1,450,000 個 (+265,000)
と推移してきています。
OS 毎の内訳は以下の通りです。
OS | 全体に占める割合 (前回 → 今回) |
---|---|
iOS | 66% -> 68% |
Android | 17% -> 16% |
macOS | 8% -> 7% |
Windows | 8% -> 7% |
Passkey Auto Upgrade の影響により、iOS の比率が前回に引き続き上がり続けています。
パスキー登録導線の変化
iOS における Passkey Auto Upgrade の CVR は、昨年10月の Passkey Auto Upgrade サポート開始直後の30%超から10%程度にまで下がってきています。これは普段からパスワードマネージャーを使っているユーザーの多くがすでにパスキーにアップグレードした結果かと思われます。
一方で、4月の頭からマネーフォワード ID では新規端末でのパスワードログイン時に Email OTP が求められるようになり、Email OTP でのログイン直後にパスキーの登録を促すプロモーションを開始した1ので、Passkey の登録導線は Email OTP 直後のプロモーションが Passkey Auto Upgrade を超えて第一位に踊り出してきました。
また4月の終わり頃から Chrome でも Passkey Auto Upgrade のサポートが開始されましたが、こちらは CVR が1-2%程度と非常に低く、ほとんど役に立っていません。こちらは今後の改善に期待します。
パスキー利用状況 @ 2025 May.
OS 毎に、全登録済パスキーのうち実際に認証に利用された割合も見ていきましょう。
OS | 実際に認証に使った割合 (前回 → 今回) |
---|---|
iOS | 46% -> 49% |
Android | 63% -> 60% |
macOS | 61% -> 62% |
Windows | 41% -> 45% |
ASWebAuthenticationSession のバグが修正された影響か、iOS での登録済パスキーの利用率は改善しています。
また Windows でも、全体のログインアクションにおけるパスキー利用率はまだまだ2%弱と非常に低いのですが、登録済パスキーの利用率という意味では上昇が見られます。Windows 11拡大の影響でしょうか?
プラットフォーム毎のパスキー利用状況 @ 2025 May.
次に、前回同様プラットフォーム毎のパスキー利用状況を見てみましょう。
OS | ログイン手段にしめるパスキーの割合 (前回 → 今回) |
---|---|
iOS | 20% -> 40% |
Android | 17% -> 20% |
macOS | 17% -> 21% |
Windows | 1.5% -> 1.6% |
こちらの数字を見ると、ASWebAuthenticationSession のバグ修正の影響がいかに大きかったかがわかるでしょう。
パスキー利用率 (図中 webauthn
) の倍増に伴い、すでに iOS ではパスワードを利用したログイン (図中 password
+ email_otp
) が全体のログインアクションの50%以下になっています。
また iOS Native App の利用率が高いマネーフォワード ME でも同様に、パスワードを利用したログインが全体のログインアクションの50%以下になっています。
さらに、プラットフォーム横断での全体のログインアクションにおけるパスキー利用率は、Money Forward Tech Day 2024 (2024年9月) 時点が8.7%、2025年5月時点が18.7%と、約10%向上しています。
Passkey Auto Upgrade によるパスキー登録数の向上と、ASWebAuthenticationSession のバグ修正によるパスキー利用率の向上により、パスキーがパスワードを凌駕する世界は確実にそこまで来ていると感じます。
最後に
ついに iOS ではパスワード利用ユーザーが過半数を割る時代がやって来ました。
一方で、前回のレポート時に期待を寄せた Chrome の Passkey Auto Upgrade は、いまのところ期待外れな結果となっています。
Windows & Android でのパスキー利用率向上、ひいてはパスワード利用率の過半数割れを実現するためにも、ぜひ Chrome の Passkey Auto Upgrade 改善に引き続き期待しています。
それでは WWDC 2026 を楽しみにしながら、次回のレポートでまたお会いしましょう。
-- @nov
- パスキーログイン時には Email OTP による認証をスキップできることを訴求しています。↩