はじめに
皆さんこんにちは、ERP開発本部 福岡第一開発部 Guardianグループの@tosite(てっしー)と申します。
普段はCRE(Customer Reliability Engineer)的な立場から、クラウド経費の保守・運用や運用改善などを推進しております。
今回は、8th長崎QDGで「生成AIで変える問い合わせの未来〜チームグローバル化の香りを添えて〜」というテーマでLTしてきました!
実は前回の7Th長崎QDGでも「ER図クエスト 過ぎ去りしドキュメントを求めて 〜複雑性に眠る秘宝〜」というタイトルでLTしたのですが、今回はまったく違う話がしたかったので、このテーマに至りました。
ちなみに余談ですが前回導入したtbls(データベースドキュメント自動生成ツール)は社内でも非常に好評で、さらに発展したところで「tbls活用事例 〜 ビューポイントから データベースを整理してみた話 〜」という話もしていますので、ご興味ある方はこちらもぜひご覧ください。
長崎QDGとは?
NaITEというコミュニティが主催している、長崎の技術者向けのイベントです。
年々その規模を拡大し、今回で8回目の開催となったとのことです!
NaITEについて
「NaITE(長崎IT技術者会)」は長崎に縁のある技術者による技術コミュニティです。
QDGについて
年に一度長崎市内でフラグシップイベントである長崎QDG(長崎 Software Quality and Development Gathering)やAgile japan 長崎サテライトを開催、その他長崎内外で勉強会やSIG活動に取り組んでいます。
nagasaki-it-engineers.connpass.com
例年、様々な講師の方に来ていただいているとのことですが、今年もご多分に漏れず豪華な講師の方ばかりでした!
長崎であの規模の講演が聴講できるのは、長崎QDGならではのものだと思います。
マネーフォワード 福岡開発拠点のメンバーもたくさん参加しており、現在鋭意参加レポートを執筆中です!
こちらについては後日公開予定ですので、お楽しみに!
本題
改めて登壇に使用したスライドがこちらです。
ざっくり紹介すると、以下の3点について話しました。
問い合わせの複雑性について
マネーフォワード クラウド経費では、お客さまからの問い合わせをカスタマーサポート(以下、CS)チームが受け付けております。
そしてその問い合わせのうち、CSチーム単体で解決が難しいもの・テクニカルサポートが必要なものをGuardianグループ(開発チーム)にエスカレーションする形を取っています。
基本的にはお客さまの問い合わせ内容を要約したうえでエスカレーションするのですが、そのフローにはいくつかの課題が潜んでいます。
- 課題① 起票者がお客さまの問い合わせ内容を取りまとめる中で、情報の欠損や補完が生じる可能性がある
- 課題② 起票者のプロダクトへの理解度の違いなどによって起票内容に差が出る可能性がある
- 課題③ 特に複雑性の高い事象の場合、内容を正確に把握するために時間が必要となる
課題①については前任リーダーの@miyamura.koyoが、CSチームの問い合わせ起票者向けにガイドライン(以下、問い合わせガイドライン)を定めてくれたことで一応の解決を見ました。
ですが、その他の2つの課題については機械的に解決するのが難しいままでした。
加えて起票内容や要約を求めることを人対人でやってしまうと、体験として非常によろしくないばかりか、場合によってはギスギスすることが目に見えています。
私たちはいい感じに「今よりもちょっとだけ幸せな未来」を手にしたいだけなのに……。
そこで、生成AIを導入することでこの問題にアプローチしました、というのが今回のお話になります。
機械に一次レビューをしてもらえば、誰もつらい気持ちにはならないでしょう。
生成AIであれば情報をいい感じに要約することだってできます。
私たちが求める結果は「100%間違いがない」レビュー・要約ではなく、70%程度の精度があれば十分なのです。
この課題に取り組みにあたって、私は以下の構成を考えました。
今まで人間が頑張っていた、問い合わせの内容のレビューとその要約を生成AIに代替させました。
そしてCSチーム・Guardianグループそれぞれの観点からレビューや要約を入れるようにしています。
さらに、課題①を解消するための「問い合わせガイドライン」を生成AIに学習させることで、より高精度に課題②と③の解消ができるようになりました。
まとめると、CSチームはセルフレビューが可能になり、情報が不足している場合、Guardianグループにエスカレーションする前に必要な情報を追記できるようになりました。
GuardianグループはCSチームからのエスカレーションを受けた際に、まとめを読んで概略をつかんだ状態から詳細を把握できるのでより短時間で調査に移れるようになりました。
以下に、一部ではありますがGuardianメンバーの声を載せておきます。
全ての問い合わせを高い精度で処理できるようになったわけではありませんが、少なくとも業務を進めるうえで有力なサポートツールとしてワークしていることは間違いありません。
今後もこの機能を育てていって、個人の経験の差に極力依存せず、問い合わせを高精度で対応できるようにしていきたいと考えています。
グローバル化について
ところで、マネーフォワードと言えばグローバル化を推進しているということは皆さんご存知かと思います(もしご存知でなければ、これを機にご認識いただければと思います!)。
moneyforward-dev.jp
今現在もさらなるグローバル化に向けて様々な取り組みが行われていますが、一度Guardianグループの目線から状況を整理してみたいと思います。
以下の図のとおりですが、ここにもやはりいくつかの課題が横たわっています。
- 課題① お客さまは日本の方が多く、問い合わせは日本語だが、調査などの対応は英語で行う必要がある
- 課題② グローバルメンバーは問い合わせやドメイン知識を英語にしてキャッチアップする必要がある
特にGuardianグループは、関わる社内ステークホルダーの数が多く、グローバル化を進めるにあたってハードルが高いと感じております。
例えそのスコープを問い合わせに絞って機械翻訳を導入したところで、十分な翻訳精度が得られず、理解できない文章になることは明白です。
皆さんもご経験があるかもしれませんが、特にドメイン知識を含む文章であったり、会社固有の単語が含まれていたり、ハイコンテクストな内容だったりするとその精度はとみに低下します。
正確に内容を把握しなければならない問い合わせという領域において、これは致命的な問題です。
そこでAIの「いい感じにコンテクストを読んで翻訳してくれる」力に期待して、 先ほどのフローに「生成AIの力を使った翻訳」を組み込みました。
まだまだ一部変な翻訳(特に社内用語)などはあるものの、全体的にとてもわかりやすい翻訳を提供してくれています。
今後は単語帳機能の実装などを通して、より翻訳精度を上げていこうと取り組んでいる最中です。
こういったテクノロジーをうまく活用することで「無理のないグローバル化」を推進していければと考えていますので、今後のGuardianグループの成長にご期待ください!
終わりに
久々のLTでしたが、やはりお祭り感があって非常に楽しいですね!
当時の反応を見ても、皆さん楽しんでいただけたようで何よりです (さすがにこの情報量を5分で収めるのは難しいなと思い始めた今日この頃です)。
会場や懇親会では同じ悩みを持つ方とお話しする中で新しい知識を得ることができ、非常に有意義な時間を過ごすことができました。
最後になりますが、長崎QDGを主催してくださったNaITEの皆さま、素敵なイベントをありがとうございました!
改めて登壇の機会をいただけて光栄でした!
また来年も参加できることを心待ちにしています。
それでは皆さま、また次回、9th長崎QDGでお会いしましょう!
最後の最後に、恒例のリンクを貼っておきます。
マネーフォワード福岡開発拠点ではエンジニアを募集しています!
福岡開発拠点のサイトもあるので、ぜひご覧ください!