Money Forward Developers Blog

株式会社マネーフォワード公式開発者向けブログです。技術や開発手法、イベント登壇などを発信します。サービスに関するご質問は、各サービス窓口までご連絡ください。

20230215130734

「AI時代の働き方」と「AIを活用する未来」〜マネーフォワード CTO が考えていること(2025 年 9 月)〜

こんにちは、マネーフォワード CTOの中出(なかで)です。

生成AIは2022年に突如広まってから、今も驚くべき速さで進化しています。エンジニアが担ってきた仕事の大部分は、(生成AIを含む)AIに任せられる世の中になっていくでしょう。「AIに仕事が奪われる」と考える向きもありますが、個人的にAIの発展は世の中にとってポジティブなことだと捉えています。

今回のエントリーでは、AIの発展によるエンジニアの働き方の変化、またその中でのマネーフォワードとしての強みを考えてみます。

AIの進化は完全にポジティブに捉えている

私たちが提供しているサービスはバックオフィス向けSaaSが中心です。多くの企業にとって経費精算や経理などのバックオフィス業務は本業ではありません。それぞれの企業には、社会に貢献するための本業があり、その本業を成り立たせるためのバックオフィスであるはずです。その作業を「できるだけゼロに近づけたい」というのがマネーフォワードの考えです。

一方、エンジニア目線で考えると、「開発を本業としてやりがいを持って取り組んでいる」という方は少なくないでしょう。それでも、何かを成し遂げるためのシステムや機能は、あくまで「手段」なのです。手段の大部分をAIが作れるのであれば、AIに頼ったほうが自動化や生産性向上が進むはずです。

週休3日で働ける会社が生まれるかもしれませんし、働かなくても生活できる人が増えるかもしれません。その結果、たくさんの人が「本当にやりたいこと」に時間を使えるようになるのではないか――そのように好意的に考えています。

「働かなくていいなら誰も働かない」とは思いません。働くことが自己実現や自己表現だと考える人や、社会に貢献したいという思いで働き続ける人はいるでしょう。そうした人々もAIを活用して効率的に課題を解決できる未来が、十分あり得ると考えています。

「何を作るのか」を決めるのは人間に残された領域

「人間にしかできないこと」の領域は、時間の経過とともにどんどん狭まっていくでしょう。ただ、現時点で言えば、「何を作るのか」を考えるのは人間の役割です。同時に、AIが作ったものの最終チェックも人の役割として残っています。

一方、開発工程の真ん中にあるシステム設計やコーディングはAIと相性が良いです。「上流」「下流」という言い方をするならば、要件定義などの上流と最終チェックや品質確認の下流の部分は、まだ人間が担う必要があります。

作るものを決めたり、ユーザーの使用体験を想像したりするのは、最後まで人間の仕事として残るだろうと予想します。もし、それすらもAIに任せられるようになると、人が手をかけることなく、よいサービスがどんどん生まれる世界になります。開発スピードが一気に加速するため、「一晩寝たら、自分の仕事がすべて自動化されている」なんてことが起こるかもしれません。

エンジニアにはユーザー理解とドメイン知識が必要になる

これから、エンジニアの働き方はどう変わっていくのでしょうか。開発チームには、エンジニアやデザイナーなどいろいろな専門性を持つ人たちがおり、それぞれコーディングやデザインなどのさまざまなスキルを活用しています。

プロダクト・サービス開発が最終目的であれば、使うスキルにこだわる必要はありません。ハードスキルの大部分をAIがフォローできるなら、エンジニアやデザイナーといった垣根がどんどん薄らいでいくと考えられます。将来的には、一人のプロジェクトマネージャーがAIに指示を出し、一人でプロダクトやサービスを作れる、といった未来があるかもしれません。

例えば私たちの事業の一つであるB to Bビジネスの場合、チームでのものづくりをさらに改善させようとしたとき、コーディングやデザインの能力を向上させるより、ユーザー理解やドメイン知識を深めるほうが重要になるのではないでしょうか。

エンジニアやデザイナー、プロダクトマネージャーといった役割に関係なく、それぞれがクリエイターとして見えない課題を見つけ、その解決策を提示する力が重要になっていくはずです。

その領域は、これまでプロダクトマネージャーの担当でした。ユーザーインタビューや、マーケットリサーチなどを通じて、知見を増やす努力をしていたのです。ところがこれからは、メンバー全てに深いユーザー理解やドメイン知識があるチームこそが、良いプロダクトやサービスを作れるようになるでしょう。

私がSIerとして働いていた時には、幸いにもユーザー理解やドメイン知識を深められる環境にいました。複数の企業でお客様と対話を重ねていた私は、特定の領域に関してお客様以上に業務に詳しくなり、コンサルタントのようなアドバイスもしていました。

マネーフォワードのエンジニアチームを顧みると、ユーザー理解に関してはまだまだ足りていないと考えています。我々のチームには日本語が話せないメンバーもたくさんいます。そのため、日本人のお客様向けにユーザーヒアリングをするのも簡単ではありません。それぞれのメンバーがユーザー理解やドメイン知識を深めるためのアプローチは、まだまだこれから検討していくべき課題だと思っています。

また、深いユーザー理解やドメイン知識を持つロールモデルとしての人材も必要です。会社として、キャリアのグレードといった仕組みを作ることも検討すべきかもしれません。

CTO中出の個人的なAI活用術

私自身、一般的な調べものは、インターネット検索はほぼせずAIに尋ねるようになっています。プレゼンテーションのスライドに関しても、ゼロから自分で作りはせず、AIに作らせたものを直す場合がほとんどです。

AIは非常に仕事が早く、60~70点ぐらいの成果物をあっという間に作ります。その後、自分の手で80~90点を目指すのです。

例えば、AIを使って既存の環境に新しい機能を追加してもらうと、自分ひとりで作ったら一週間はかかりそうな「それっぽいもの」がすぐにできます。ところが、大まかな指示では、既存の機能が壊される場合があるのです。

細かく指示して、チェックしながら仕事をさせるほうが危険は少ないものの、それでは生産性が向上しにくいです。私が個人的な環境でいろいろ試した結果、大量な仕事を処理させ、壊された部分を細かく指示して修正したり人の手で直したりするほうが、結果的に早い場合があります。

例えば「一週間分の仕事を指示して、一日かけて直す」といった考え方です。今時点でも、そのほうが早く終わりますし、続けていくうちにAIの誤りも減っていくでしょう。人と同じで、マイクロマネジメントをするのではなく、好きにやらせて後の処理に責任を持つほうが良いようです。

ただし、いつでもどこでもできる方法ではありません。私は個人的な環境内だったため壊されても問題ありませんでしたが、たくさんのメンバーと一緒に作っている大きなプロダクトの場合や重要で複雑な機能を修正する場合には、同じようにはできません。バランスを見て考える必要があるでしょう。

マネーフォワードの強みは、大量にある独自データ

私たちは、開発にAIを活用するだけでなく、お客様自身が業務の中でAIを使う仕組みを作っていきます。ユーザーが、「AIと会話しながら作業する」「Eメールで受け取った領収書を自動でシステムに入力する」「AIが一次チェックを担い、ユーザーは最終的な承認作業に専念する」など、実現したい機能はたくさんあります。そのためには、お客様の仕事の自動化を目指しながら、AIが正しい判断をするように設計していく必要があります。

AIは、読み込ませるデータが非常に重要です。AIの進化は今のようなインターネット環境がなければ実現しなかったでしょう。あらゆる情報がインターネットに存在するからこそ、AIはここまで進化したのです。

インターネットに公開されているのはパブリックな情報だけです。私たちが取り組んでいる領域は、インターネット上にないデータがほとんどを占めています。

私たちは以前より、Autonomous Backoffice(自律的バックオフィス)、つまり人がサービスを使わなくてもサービスが提供される状態を目指しています。そのために、ある程度の製品ラインナップが必要だと考え、着実に実現させてきました。

幅広い製品ラインナップを持ち、幅広いデータを取り扱っているため、匿名性を保ちながらAIを使ってそれらのデータを活用すれば、思いもかけないイノベーションが生まれる可能性があります。

これから活躍するのはAIネイティブな若手

私が社会人になったのは、パソコンやインターネットがまさに世の中で使われ始めた頃。会社にパソコンやインターネットに詳しい人がおらず、圧倒的に優位な状態で仕事ができました。パソコンやインターネットの登場といったパラダイムシフトが起こるときは、世の中に大きな入れ替わりが起こるチャンスなのです。

学生など、これからの時代を担う世代は、AIを使いこなしている人も多いでしょう。今まさに、大きなパラダイムシフトのタイミングに運よく当たったと言えるのではないでしょうか。

若い世代なりの感性と経験で、次の時代の新しいサービスを作れる可能性を感じています。ぜひそういった感性を、マネーフォワードでも活用していただければと思っています。