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はじめに
こんにちは、マネーフォワード ID 開発チームの @nov です。
前回のパスキー利用状況レポート vol.1から3ヶ月ほど経過しました。その後エンドユーザーのみなさんに向けたプロモーションも実施し、順調にパスキー利用者数が伸びています。
パスキープロモーションの進捗
2023年6月から、マネーフォワード ME という家計簿アプリのユーザー向けにパスキーの登録を促すプロモーションページの表示を開始しました。
現在パスキー未登録なユーザーがパスワードを使ってマネーフォワード ME にログインすると、以下のようなプロモーションページが表示されるようになっています。
プロモーション対象は開始当初は1%ほどに限定していましたが、7月終わりごろから全マネーフォワード ME ユーザー向けに対象を拡大しました。
パスキー登録状況 @ 2023.08.15
パスキーの総登録数は、2023年5月15日時点で 7,200 個ほどでしたが、2023年8月15日時点では 56,000 個ほどに到達しています。
OS 毎の内訳は、以下の通りです。マネーフォワード ME のユーザー層の影響もあり、iOS ユーザーが激増しています。
OS | 全体に占める割合 (前回 → 今回) |
---|---|
iOS | 58% → 65% |
Android | 26% → 18% |
macOS | 10% → 8% |
Windows | 5% → 5% |
パスキー利用状況 @ 2023.08.15
一方で、登録後に実際にログインに使われたパスキー比率を見てみると、以下のように軒並み利用率が低下しています。
OS | 実際に認証に使った割合 (前回 → 今回) |
---|---|
iOS | 31% → 15% |
Android | 33% → 22% |
macOS | 38% → 24% |
Windows | 36% → 16% |
全マネーフォワード ME ユーザー向けにプロモーションを開始してからまだ半月ほどで、登録直後のパスキーが多いことを差し引いても、プロモーション経由で登録されたパスキーはあまり意識されず使われないまま放置される確率も高いことがわかります。
ただ、マネーフォワード ID ではパスキーオートフィルに全面対応しているため、そもそもユーザーがパスキーとパスワードの違いを意識せずともOSやブラウザに内蔵されたパスワードマネージャーがパスキーを使うようユーザーを促してくれるという前提のもとでパスキーでのログイン UX を設計しています。
その前提に立つと、現状プロモーション実施後にパスキーの利用率が低下しているのは、パスワードマネージャーがあまりパスキーの利用を促していない可能性もあります。
パスキー登録 UX の課題
パスキー登録数自体は前回のレポート時から約8倍と激増していますが、パスキープロモーションにおいてはパスキーの登録 UX の悪さも数字として明らかになってきています。
前掲のパスキープロモーションページにおいて、ユーザーには「このデバイスを登録する」と「スキップする」という選択肢が与えられていますが、このページでは50%程度のユーザーが「スキップする」を選択しています。
また「このデバイスを登録する」を選択するとブラウザネイティブのモーダル画面が表示され、パスキー登録が促されるのですが、そのブラウザネイティブのモーダル画面でも30%程度のユーザーが「キャンセル」を選択しています。
結果として、プロモーションページを訪れたユーザーの35%程度しか実際にパスキーの登録に成功していません。
パスキー自体の認知が低いので、明示的にパスキーの登録を促せばスキップされたりキャンセルされたりするのは当然と言えば当然なのですが、この登録 UX では過半数のユーザーがパスワードからパスキーに移行するような未来は永遠に来ないでしょう。
以下の GitHub Issue でも提案されているように、より自然な形での登録 UX の実現が待たれます。
[w3c/webauthn] #1929 Non-modal registration during conditional assertion
他の認証手段との比較
とはいえ、直近2週間ほどの間にマネーフォワード ME にログインしているユーザーに限って言えば、パスキーでのログイン数は TOTP や SMS OTP などの二要素認証でのログイン数をはるかに上回っています。
さらに言えば、パスワード、Google Sign-in、Sign in with Apple につぐ、第4位の主要認証手段になっています。Yahoo! JAPAN や Facebook (※ 今月末サポート終了予定) などはすでに超えています。
プロモーション対象をマネーフォワードのビジネス向けプロダクトのユーザーにも拡大すれば、おそらく Sign in with Apple のユーザー数をも超えるでしょう。
下手に OpenID の対応 IdP を増やすよりは、パスキーに対応した方が効果的な時代にはなっているかもしれません。
最後に
以上、2023年8月時点でのマネーフォワード ID におけるパスキー利用状況報告でした。
まだ他社サービスでのパスキー登録数等の情報がなかなか出てきませんが、マネーフォワード ID では今後も継続的にこういったレポートを公開していこうと思います。
みなさんもぜひ自社の数字を公開していただけるとありがたいです。
それでは、vol.3 でまたお会いしましょう。
-- @nov