Money Forward Developers Blog

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技術広報から見たNLP2024と技術カンファレンスの違い

TL;DR

2024年3月11日~15日に開催された言語処理学会第30回年次大会(以降、NLP2024)にブース展示や企業スポンサーのスタッフとして参加していました。

www.anlp.jp

弊社リサーチャー 山岸さんの参加レポートはこちらになります。 研究職の方向けの内容はこちらになっているので、ご興味をお持ちになった方はぜひご一読ください。

moneyforward-dev.jp

本記事の前提

本記事内では2つのカンファレンスが登場します。 概念として別物として扱いたいため、単にカンファレンスと称する場合はRubyKaigiやGo Conferenceのような技術カンファレンスを指し、学会と称する場合はNLPなどのアカデミックな学会のことを指すこととします。

また研究職とリサーチャーという言葉を使い分けています。 リサーチャーと書いた場合は弊社の職種を表し、研究職とした場合は世間一般の研究職の方全般を指すとお考えください。

NLP2024に参加した経緯

筆者である luccafort は学生・社会人を通じて今回、初めて学会に参加しました。 ぼく自身は大学が文学部出身、かつ大学中退をしているため、これまで学会に参加したことが人生で一度もありませんでした。

「学会は普段参加しているカンファレンスとはまた違う雰囲気だ」という話は同僚や上司から聞いていたのですが、実際に参加してみて、それぞれの似ている点と違う点を実感しました。

昨年は同僚の あちゃさん(@achamixx) が参加して諸々の業務を行なっていましたが、今年はぼくが参加することとなり、今回感じたことを残すのもなにか価値があるかもしれないと考えました。 その際に「技術広報の観点で感じた相違点や類似点を書こうと思う」旨を山岸さんに相談したところ「そういう切り口のブログはあまりみないので面白そうだ」と背中を押してもらい、執筆しています。 このように感じたのだなと思ってもらえれば幸いです。

NLP2024

学会とカンファレンスの類似点

以下は実際に参加して感じた類似点です。 実際にはもっとあるのかもしれませんが、特徴的だと感じたもののみ抜粋しています。

  • 研究職(カンファレンスだと技術者)が主役
  • どちらも親しみやすいお祭りのような雰囲気がある
  • ブースが企業の研究職と参加している研究職や学生との交流の起点になっている
  • 参加者の知的好奇心が高い
  • 参加者同士の交流が活発

学会とカンファレンスの相違点

  • カンファレンスよりもカジュアルにオープンに転職活動をしている
  • ブースはおまけ程度。カンファレンスの方がブースを巡るための企画を積極的にしてくれている
  • ブースに人事や広報がいると驚かれる
  • ブースの展示は最小限。メインコンテンツは研究職のメンバーとの議論
    • ポスターに書かれた研究結果を深く掘り下げるため、議論が最も魅力的なコンテンツとして機能していた
    • 逆にいうとお菓子やノベルティなどはもらえてもいいけど……というオプショナルな雰囲気
    • 極論、研究職がいて議論が行えるならブースにはチラシがあるだけで十分なのかも
  • 研究職のメンバーとの議論や会話を求められる
    • 人事や広報しかいない時間に訪れた人が再訪して「研究職の方はいますか?」と質問されていた
    • 何度も足を運んでくれた方もいてちょっと申し訳なかった
  • 学会なので当たり前かもしれないが学生が多い
    • 就職活動も含んでいるのだろうけど、カンファレンスに比べてかなり積極的に交流されていたのが印象的でした
    • 自分たちの研究ではこうだがなぜこのような結果になっているか?と簡単には答えられないような鋭い質問が来ることもありました
      • こういう質問が来るのが物理開催の醍醐味ですね!
  • ネットワーキング(人脈のつながり)が個人に大きく依存している
    • カンファレンスでは同じ会社や組織、技術コミュニティなどの色がもう少し出ているがより個人に依存しているように感じた
    • これは単純にぼくが知らない世界だからそう見えてるだけの可能性がある

参加してみた感想

研究職の方々は基本的に技術的な議論を求めるため、カンファレンスとは異なり、できることが限られていると感じていました。しかし、結局のところ、2024年3月13日を除く全てのブース展示が可能な日程に参加していました。

学会という特性によるものかはわかりませんが、ブースにいるであろう研究者の方と議論したい方が一定数来訪されるため、当初想定していたワンオペ体制では難しいと判断したためです。 リサーチャーが聴講にいったきりでなかなかブースに帰ってこない(笑)珍事件が起きたため、休憩やお昼休憩を適切に取るために2名体制になるよう方針を変更しました。 このあたりはシフト制にする、不在時の対応や研究職が在席する時間を告知するなど工夫次第でワンオペでも回せそうなので来年はもう少し改善したいところですね。

サポートに来てくれた貞光さんと人事の橋口さん

後日、弊社のメンバーから聞いたのですが「技術広報が現場にいること自体は割と好意的に捉えられていた」というフィードバックをいただきました。 技術広報や広報、人事がブース担当をすることで、研究職の方が聴講にいくことができるのはぼくのような職種がNLPに参加するメリットかなと思います。

技術広報として働いているとこういった些細なことは当たり前になってしまいますが、改めて言葉にされると「なるほど!」と実感しますね。 せっかくなら研究職の方にとってもよい学びの場になってほしいですし、楽しんできた内容を社内に還元してもらえると会社としてもハッピーなのでよい取り組みなのではないかと改めて感じました。 フィードバックしていただいた方には改めてこの場で感謝の意をお伝えしたいと思います。ありがとうございます!

初日と2日目は、専門職ではないぼくが「この研究はXXXを目指しており〜」という内容を、しどろもどろになりながらも、ブースに来訪してくださった方々に説明していました。

これは事前に山岸さんが開催してくれた発表内容に関する講習会のおかげで、どのような研究をしているのか、どういう意図を持っているのか、そしてマネーフォワードがなぜその研究を行っているのかを多少なりとも理解できていたためです。 講習会がなければ、「わ、わかんないッピ……」となっていたかもしれません。

しかし、より専門的な質問には答えるのが難しく、困ってしまうこともありましたが、そんな時には研究職の方が助けてくれたおかげで、何とかGot コトナキできました。

ブースの様子

もし、他社でスポンサーされる「研究内容なにもわからん」な方はポスター研究の内容を研究職の方に事前講習会で教えてもらうことをおすすめします。 事前にインプットがあるだけでだいぶ違うなと今回実感しました。

次回改善したいことはなにか

今回NLPに参加してわかった最も大事なことは、学会の本質は「人」だということです。 もちろん最大のコンテンツは研究結果なのですが、それよりも社会資本やネットワーキング、コネクション……表現の仕方はさまざまですが、「人」を同心円上の中央に配置し、そこからさまざまな関心や興味に広がっていくよう設計されていると随所で感じました。

初参加だったことも影響してか、シフト制でブースの滞在時間を管理するほどガチガチにしなくてもいいかと楽観していましたが、上記の「人」や交流が最大のコンテンツであるということを考えると、少なくとも「n日目のXX〜XX時に弊社研究職がいます」といったアナウンスができると良いのだろうなと感じました。 その点、Helpfeelさんがされていたホワイトボードに研究職の方がどこにいるか、何時に戻ってくるかをお知らせする取り組みはとても参考になると感心しました。

写真を撮り忘れてしまいましたが、社員の方と一緒にランチに行くメンバーを募集する取り組みがあり、とても面白いアイディアだなと思いました。

また、テックカンファレンスとの文化的な相違点や類似点も感じました。 普段参加しているカンファレンスはみんなで1つのお祭りを作り上げるような学園祭の雰囲気を感じることがありますが、NLPはそれよりもより参加する人同士の交流を大事にした同窓会のような雰囲気を感じました。

特に語弊を恐れずいってしまうと「あけすけな」くらい転職や就職活動がオープンに話されていたり、ブースの担当者もその会話に参加しているのを目にしてカルチャーショックを受けました。 学園祭よりも同窓会的と感じたのはそういったオープンさがあるからかもしれません。

まとめ

正直なところ、学会という言葉の印象からもっとお硬い印象(白の巨塔に出てくるようなカンファレンス)をイメージしていたのですが、実際には普段参加している技術カンファレンスのような雰囲気を感じつつも、少し違う点もあり、それぞれのコミュニティ文化の違いを体験することができました。

個人的にとても面白かったのは、ブースの隣にいた日立製作所の研究職の方と雑談する機会があったことです。 世界的企業である日立製作所と私たちの事業や会社の規模の違いを感じるとともに、逆に私たちのLLMに対する取り組みを高く評価していただき、その点について直接お話しできたのは貴重な経験でした。 「我々は社外からはこのように見られ、認められているのか」と実感することができ、非常に誇らしい気持ちになりました。

また、ブースに来訪された数名の方が昨年開催されたYANSに出したブースに来ていただいたり、NLP参加報告会に参加していた方がいたりとさまざまな取り組みを弊社が行っていることを高く評価していただけて嬉しく思いました。 ありがたいお言葉をいくつも直接聞く機会が得られたことはとても嬉しい体験ですね!

……まあ動いていたのはぼくではなく、同僚とマネーフォワード Labの研究職の方々なのですが(笑) 来年もスポンサーできるように頑張っていこうと思うので、来年のNLPや別のイベントなどでご一緒することがあればよろしくお願いします。

スポンサーセッション前に弊社ロゴが掲載されていたため撮影 弊社山岸さんのスポンサーセッションの様子

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