マネーフォワードの中の人を知ってもらうため、当社でフルタイムのRubyコミッターを務める卜部昌平が、マネーフォワードのエンジニアにインタビューをするこの企画。 今回は、Rubyエンジニアである金子雄一郎さんへのインタビューです。
社員ですら初めて聞くような、マネーフォワードに関わる人のストーリーをお届けします。
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日時
2017年1月30日 (月曜日)14:30~16:00
語り手
- 金子 雄一郎 (Rubyエンジニア) 1987年生まれ。一橋大学商学部卒業。大学卒業後、大手メーカーで経理業務に従事していたが、RubyやOSSコミュニティに出会い、2014年4月にエンジニアにキャリアチェンジ。2015年11月にマネーフォワードに入社。『MFクラウド会計』のサーバーサイドエンジニアとして、主にRailsによるアプリケーション開発に従事している。
聞き手
- 卜部 昌平(Ruby開発者)
ガヤ
- 青木 香菜子(広報・書き起こし・編集担当)
- 小川 昌之(人事・撮影担当)
金子 雄一郎 インタビュー
3年前までは経理担当でした
卜部:緊張されてますかね(笑)。最初は簡単なプロフィールをお願いします。こんな感じで生きてきました、みたいな。
金子:すごく緊張しています(笑)。僕は、大学は法学部入学で転学して商学部を卒業、メーカーで経理を3年、前職と現職がRailsの会社で、その流れでRailsエンジニアになったという経歴です。
卜部:ありがとうございます。エンジニアとして働きはじめたのはいつ頃ですか?
金子:2014年の4月頃からです。
卜部:それはどういうきっかけだったんですか?
金子:元々経理でしたが、経理業務って同じことの繰り返しが多いんです。ずっとExcelを見ていて、効率化のためにPHPやMySQLを使って業務をやりはじめました。その辺りから、プログラミングって自分にもできるんだなぁと思い、土日にオープンソース等に関わるようになり、これは職業にした方が面白いと思いエンジニアになったんです。
卜部:なるほど。具体的には何を作っていたんですか?
金子:Excelでやっていた月末の作業を、自分の部署に関しては全て僕がSQLからデータを引き、PHPで計算し、APIを叩いてExcelにデータを吐かせる…みたいなものですね。
卜部:ほほぉ。とても便利そう。売りましょうよ。
金子:僕は便利でした(笑)。原価計算が多かったのですが、原価計算は部署毎にやっていることが全然違ったりするので、汎用性はあまりないかもしれません。
卜部:原価計算に関して語っていいですよ。
金子:(笑)。原価計算は独特で色々な計算方法があって、なかなか痺れる世界でした。
卜部:最初に入った会社がRailsの会社で、転職して今に至る…と。マネーフォワードへの転職は、きっかけがあったんですか?
金子:前職時代、Asakusa.rbに行っていて、 転職を検討していた際、技術顧問の松田さんにご紹介いただいたのがご縁です。で、ここだったら自分の経験とかスキルセットでやれることがあるなと思って、入社しました。
卜部:確かに、経理のご経験があって、現在は会計ソフトの開発だと、一周して近い所に戻ってきた感はありますね。では、マネーフォワードに入社して、「思っていたのと違う」「思っていた通りだ」とかあります?
金子:思っていた通りだなと思ったのは、経理業務ってWebとあまり相性は良くないなぁと感じていたことです。その前提でやるのは、想像していた通り痺れる部分がありますね。後は、想定以上にユーザーの方が、いろんなサービスを総合的に利用してくださっていることです。
一度入力したデータは再び入力しなくて良いのは画期的
卜部:バックオフィスご経験者の意見として、当社プロダクトはこの辺がまだまだだなぁと言うのってありますか?
金子:『MFクラウド会計』だと、一度どこかで入力したデータは、その後手入力しなくていいのは、すごく画期的だって思いますし、もっと色んな所で広まればいいなって。まだまだと感じるのは、規模が大きくなると経理ってバッチとかの世界になっていくんですよね。そこをWebでどうしていくかは、自分の中でもまだ答えが出せていないですし、そこでお客様にご不便をかける可能性もあるなぁと感じています。
卜部:そうですね。ただ、それを一瞬で終わるようにできるかって言うと、それは未知ですよね。
金子:Webの良さって、レスポンスが早いことだと思うんですよ。そこをさらに解消するフェーズじゃないかなって感じています。
卜部:あらかじめ作っておく…とかですかね?
金子:Lambdaアーキテクチャみたいに、集計する計算と直近のデータを分けて合算して、即座に返してあげるような割とリアルタイムに近い考え方があると思います。そういうのを取り入れるか、実践するなどを検討していきたいと考えています。
卜部:当社サービスだと、〆処理の時期などはわかる部分もあると思うので、あらかじめ計算しておいてあげる、とかね。 さて、序盤は会計の話になりつつありますが、マネーフォワードでやってきたのは、『MFクラウド会計・確定申告』の開発が主である、ということですよね。
金子:そうですね。新機能開発や、会社の中では割と歴史があるサービスなのでコードの改修などをやったり、共通部門タスクとして、『MFクラウドシリーズ』で利用しているライブラリのメンテナンスにも時間を使っています。
卜部:それって何か別種の難しさがある感じですか?
金子:これは別種の難しさがあります。 変更頻度が高く、今となっては共通化すべきではなかったと思われるライブラリがあったり、そのためにそのライブラリを変更する度に各サービスへの影響を考慮しないといけない部分もあるので、そういう点は難易度高いなぁと思います。
卜部:ライブラリに関しては、どこかのプロダクトで使っていたものを皆で使ってねという風に広めていく感じなのですか?
金子:経緯として、『MFクラウド会計』が最初にリリースされ、そこをもとにいろいろなサービスが開発されています。それを切り出した時に、共通で使うライブラリにサービス依存のコードが含まれていることもあります。そういう事象が発生することもあって割と複雑なんですよね。
卜部:うまく切って持って行ったんだけど、あまりうまく持って行けず…という状況にもなるってことですかね。で、そこを整理していると。
金子:そうですね。整理する道具とかも検討しています。
テストを書けば良いというシンプルな話ではない
卜部:では、今やっていることで大変なこと、やりがいについて教えてください。
金子:ひとつのRailsアプリをいじっていれば良いわけではないので、そういう難しさもありますね。例えば、さっきお話したように影響範囲の見極めが難しいとただ言っているだけではすすまないので、最近Rubyに実装された
Coverage.peek_result
などが実践で使えないかなぁと試したり、足場を築いていかなくちゃいけないなって言う難しさはあります。 やりがいだと、今コストをかけて整理することで今後の機能追加がやりやすくなる部分もあるので、それがうまくいくよう整理するのは非常に価値があると思っています。卜部:少しイジワルな質問なんですけど、カバレッジみてるって話があったんですけど、テストをしていれば影響範囲ってわかるはずなんですよね。その辺りってどうなんでしょ?
金子:どうしてもアプリケーションのカバレッジが低くて、フィーチャーテストで賄おうとしていた時期があったんです。そんな背景があり、テストが通っているから安心だとは言い切れない部分はあるんですよね。
卜部:なるほど。そこの状況も改善していきたいと。
金子:そうですね。一方で、もう少し手を動かす意味では、実アプリで動かしてログを取るとか、割と地道な活動をしなければいけないなって思っています。ランタイムの方でなんとかしなくちゃっていう印象もあります。
卜部:なるほど。テストを書けばそれで良いんだみたいなシンプルな話ではないんですね。ソフトウェアが複雑で辛い話とかありますか?
金子:複数のライブラリで構成されていて、一部がバグっていてその修正方法によって他のライブラリも修正が必要とか、修正方針を決めることが困難な状況があったりして(笑)。
卜部:僕が思っていたのは、ロジックの複雑さもなんだけど、アプリケーションそのもので、例えば会計処理が複雑だっていう話もあるじゃないですか。そういう所でカバレッジがないのかなって思っていました。けれど、そこはきちんとテストされている?
金子:業務固有の所は、それなりにテストがあるんですよね。 難しいのは、複数のサービスで共有しているデータで、あるサービスにとっては想定外のデータパターンが発生すると、そのサービスの画面表示に影響がある…みたいなバグがあって、そういう難しさとは今後も付き合っていく必要があると感じています。
卜部:なるほど。だから、元々関心のある業務領域は、ちゃんとテストが書かれているんですかね。
金子:割とそういうイメージです。
リアルタイム性を損なわず、経理業務ができる世界を実現したい
卜部:今後やりたいことはどんなことでしょう?
金子:大企業の経理システムってバッチを基準にしたような月次の計算ロジックが色々あるんですが、年間の決算の数字をすぐ出せるとか、リアルタイム性を損なわずに今までの経理業務ができる世界にしていきたいですね。他には、原価計算、生産管理、在庫管理までできることがあるとすれば、そのソフトによってユーザーの業務が優位性に立てる場合があると思っています。そういう所をやる機会があればやりたいですね。
卜部:『MFクラウド生産管理』みたいな…
金子:大変そうですね(笑)。
卜部:それこそ、今の会計はある程度は決算の次に決算を出すっていう所で、そこから逆算している部分が多少あると思っています。逆にその「決算がいつでも出せます」となると崩壊しちゃう部分もありそうですね。
金子:会計には守りと攻めがあると考えています。守りは、法律上出さなくちゃいけないっていうルールがいっぱいあって、そこに従う必要があります。攻めは、その会社でのリアルタイムな数字が色々とることができて、売れている製品、利益率の高い製品・低い製品…みたいなことが真実として出てくるのは攻めの会計だと思っています。そんな側面に移行できると経理業務自体が変わって面白いなって、学生時代から考えていました。
経理以外の仕事は考えていなかった
卜部:学生時代の話に戻りますが、法学部だったのに商学部に移った話を聞いても良いですか?
金子:漠然と、高校生の時は社会を動かしているのは法律だと思っていたんですよ。法律を勉強すれば、社会がわかるんじゃないかと思って法学部にしたんですが、如何せん法律はどうしても現実に対する答えが早くは出ないことに気づき…まぁ簡単に変わったら困りますよね(笑)。一方で商学部では"営利目的の企業という存在が、物事を解決する形でサービスを提供している様"を勉強しているのをみて面白そうだなぁと思い、転学したんです。
卜部:では、その流れで会計の勉強を?
金子:そうですね。会計システムはすごく面白くて、会計の数字を見ながら企業のことを勉強をするのはすごく面白かったですし、分析対象として興味深かったです。決算書とかって、どの会社も何かしらで作るので、そこからいろんな会社の情報を見ることができるのは楽しいですね。
青木:今でも決算書を読むのは好きですか?
金子:粉飾決算とか起きたら、大体見ます。あれはバグの一種だと思っていて。バグの情報読むのって興味深いじゃないですか。
卜部:なるほど。そういう見方なんですね。
青木:経理の仕事以外に就こうとは思ってなかったですか?
金子:そうですね。経理以外の仕事は考えていなかったし、エンジニアになろうとも思ってなかった。うちは父親がエンジニアで、高校時代は「絶対にエンジニアにはなるまい!」と思っていたのに。結局なっちゃいました…(笑)。
たまたまRubyの世界がおもしろかった
卜部:Excelの達人になろうとは思わなかったですか?VBAとかはあるので、スクリプトっぽい感じですよね。
金子:そうなんですよね。ただ、そっちに行く前にたまたまたPHPやRubyを知って、たまたまRubyの世界がおもしろいって思ってしまい、こっちの世界に来てたっていう感じですね。
卜部:仕事以外だと何されてます?
金子:大体、本を読むか、プログラムを書くか、たまに美術館に行ったりもします。今は通勤時間が少ないので、家で寝る前に読むことが多いです。
卜部:僕は寝る前は疲れてしまって、本を読むチャンスがないです(笑)。最近読んで面白かった本はありますか?
卜部:あ、問題解かないといけないから大変なやつだ。けど、ああいうの良いですよね。
金子:自然に身付く感じで好きですね。
卜部:金子さんはいくつかプログラミングのコミット権をお持ちですが、その辺りを教えてください。
金子:Rubyのコミッターをしています。あとSlimとPryのコミット権を持っています。大体はRubyの中を読んで、細かいFIXを入れたりとか、Railsのマスタのテストをみて、壊れているとRuby側にフィードバック入れたりとか…そんなことに時間を使っています。
卜部:気付かない部分を気づいてくれて、普段からすごく助かっています。
金子:リリースされている時には消えているので、果たしてこの仕事の価値は…とか思う瞬間もあるんですよね(笑)。
卜部:いやいや、リリースされてから気付くようだとちょっとアレなので、大事なことです。
休日は、魚を煮たりしています
卜部:さらに話は変わって…普段は何を食べてますか?
金子:平日は妻が作ってくれたものを食べてますね。肉料理や和食が多いです。妻が18時か19時くらいに帰ってくるんですが、僕が遅い時もあるので先に食べててもらって、僕は帰ってから食べる、みたいな感じです。土日は一緒に食べますね。
卜部:割と普通だった(笑)。
金子:あ、朝と土日は僕が作ったりします。バランスをとってます。
青木:何を作るんですか?
金子:休日は、魚を煮たりしています。普通ですよ(笑)。
青木:そう言えば、美術館は何を見に行ったんですか?
金子:最後に見たのは、ゴッホとゴーギャンです。 DOMANIはそろそろ終わってしまうので、観に行きたいですね。
卜部:美術館って大体終わり間近になって行くっていうパターンになりがちですよね(笑)。
金子:そうなんですよ(笑)。あ、趣味でいうと最近は、OCamlをさわっています。MinCamlっていうのが昔ありましたが、自分でコピーを作りながらOCamlのドキュメントを読んでヒィヒィ言う…というのが最近の趣味です。
卜部:触ってみた感じ、どうです?
金子:元々こういう言語は触ったことがなくて、MinCamlを見ながら書くんですけど、MinCamlって型の情報を最後までは持っていかないんですよね。 ある時点で型のチェックをして終わりっていうのが最近知ったことで、そういうもんなんだぁって発見があって。中身も面白いですね。
卜部:どこまで持って行くかって言うのもありますよね。割と最後の方まで持って行くっていう説もある。最初の方に外しちゃう方が、簡単は簡単。ただ、何か所もチェックした方が良いし、比較的assemblerに近い所まで持って行くと、それはそれに伴った最適化はしやすかったりするとかしないとか。
金子:そうなんですね。なるほど…!
会計に詳しいエンジニア以外のメンバーとの関わりも多い
卜部:仕事の話に戻りますが、こんな人と働いてきて気付きや学びがあった、みたいなエピソードとかあります?
金子:入社して1年と4か月程経ちましたが、 会計チームはバックグラウンドが多様な人が結構居て、ごりごりプログラムだけ!ではなく、谷口さん然り、他のエンジニア含めて割と色んな考え方の人が多いですね。会計に対する情熱が高い人も多くて、それは楽しいというか面白いですね。
卜部:会計チームはエンジニア以外との関わりも多くて面白そうですね。
金子:そうですね。CS、営業、プロダクトオーナーとか、非エンジニアのメンバーと関わる機会は多いですね。
卜部:そこは働きやすい?働きにくい?
金子:働きやすいですね。リリースする前段階では、会計に詳しい人が多いので、結構フィードバックをもらいます。あとは、お客様のいうことを無理やり全て受け入れるスタンスではない人が多く、抽象化したり整理して意見を言ってくれる雰囲気なのはありがたいです。
卜部:会計だけじゃなくてプラットフォーム的な部分はどうです?『MFクラウドシリーズ』って、プロダクト毎に分かれてるんですよね?
金子:中々大変です(笑)。仰るように分かれているので、その結果いろんなエンジニアの手によっていろんなものがメンテされずに放り込まれていた歴史もあって。それをしっかり整理しているのが最近ですね。
卜部:今はそこは融合していこうという動きになっているんですね。そこはやりがいもあるだろうけど大変そう。
金子:そうなんですよね(笑)。あけてみたらすごいことに…っていうのは社内で情報共有しているんですけど。
卜部:まぁでもそれはプロダクトの大変さですよね。人間関係における大変さ、とかではない。
金子:そうです。ただ、やっぱり各プロダクトが「今何をやるべきか」のスピードとかも違うし、今どういうフェーズかが違うと足並みが揃わなかったりするので、個人個人の大変さはやっぱりありますね。
会計ソフトを作るのが「面白い」となるには?
卜部:今後、金子さんはどんな人と一緒に働きたいですか?
金子:何かにつけ、突き詰められる人だと素敵だなと思います。自分が書いたソースコードはこれだから、そこ以外は知りませんっていうスタンスはラクかもしれないんですけど、それ以上踏み込んで行動できる人の方が良いかもしれないです。 それ以外は、会計ソフトのプログラミングだけではなく、こんな人たちが使っていて、こんな風になっていて…まで意識がいく人の方が良いですね。そういう深堀りができると、一緒に働いていて楽しいなって思います。
卜部:なるほど。いい話ですね。
青木:会計チームって、元々会計の知識がある人が多いですか?
金子:会計の実務経験がある人がエンジニアもやっているケースが結構あります。もちろんそうでない人たちもいます。 (編集注) 当社にはバーチャル経理部という活動があり、会計経験がない社員が本気で経理業務を覚えるための取り組みとなっている 。
青木:もはや不思議な会社ですね。
金子:そうですね(笑)。最終的には会計知識はないよりはあった方が、会計ソフトをつくる上で「面白い」と感じられると思います。
卜部:いい話だ。今後、金子さんがやりたい『MFクラウド生産管理』をやる上で、「こんな人に来てほしい」とかあります?
金子:生産管理や在庫管理って実務が当然あって、そことどれだけ仲良く付き合えるかがキーポイントになりつつ、如何に抽象化できるかっていう話にもなるんです。そういう意味では理屈一辺倒ではなく、深みのある現場の感じがわかる、或いはわかろうとする人の方が良いのかなって思います。
卜部:現場の感じということで、そのあたりエピソードはありますか?
金子:僕が経理だったこと以外だと、うちは母親の実家が工場で、父親がそこの生産管理のシステムをずっとやっていて。その説明を小さい頃から聞かされていて。全然わかんなかったんですけどね(笑)。
卜部:子どもに説明しちゃうタイプの親御さん(笑)。
金子:そうなんです。「Z80が良いんだよ」とか言われてもなんのこっちゃって感じで(笑)。そういう経験からシステムがあるおかげで適切な生産管理ができるっていうのが理解できて、業務ソフトウェアっていうのを信用している部分というか、良いものを作ってるつもりだという想いはあります。
卜部:なるほどですね。では突然ですが、好きな言葉とか座右の銘とかあれば。
金子:「人の行く裏道に道あり花の山」っていう言葉は好きですね。株式投資の格言で、表ではなくて裏の方から行くと結果的に楽しむことができたっていう意味なんです。後は「地獄への道は善意で敷き詰められている」。良かれと思って行ったことが悲劇的な結果を招いてしまうこともあるというか、中途半端な考えをもとに手を抜くとロクなことがないぞって肝に銘じながらやってます(笑)。
卜部さんに逆質問「Rubyにどうコミットして行ったら良いですか?」
青木:この辺りで新しい試みをしたくて…。卜部さんに逆質問、しませんか。
金子:えっ(笑)。
卜部:いいですね。どうぞどうぞ。じゃぁここからは逆質問タイムにしましょう。
金子:えーと、じゃぁ…
青木:普段はあまり直接はコミュニケーションはとらないですか?
卜部:ありますよ。たまに「これバグっぽいですね」みたいなこと話したりとか。
金子:あとは、卜部さんがRuby Issue Tracking Systemに投稿しているのを個人アカウントで見ているので、あぁこうしてるんだなぁとか見たり。
卜部:そういう意味でいくと、金子さんがみてくれている部分があって、僕もみている部分があって、まぁお互いにあれこれ疑問に思うと話に花が咲いたりしますね。
金子:僕、今エンジニア3年目なんですけど、いち若手として、どういう風にRubyにコミットすると良いかが自分の中で決まっていなくて、どう考えるべきですかね?
卜部:僕もあんまりテーマは決まっていないのでなんとも言えないんですが、自分が好きじゃないものを無理にやっても長続きしないんですよね。だから、ある程度興味があるものをやっていくのが長続きの秘訣かもしれないです。面白いなっていうものがあったりすると、それをやってみるのが良いと思います。 例えば、だれもメンテナンスしてないっぽいライブラリがあって、それ面白そうだなって思ったら見てみるとか。そういうのがきっかけで「じゃぁこれをメンテナンスしてみるか」ってなったりするんじゃないですかね。
金子:なるほど。それで言うと、卜部さん自身のRubyに対する興味ってどういう変遷を辿ってきたんですか?
卜部:そもそも最初はRubyのバージョン管理というか、当時Rubyがリリースされてはすぐ壊れるみたいな事象が頻発していた時期があったんですよ。それに対して疑問がまずあった。で、他も見ていくと、あーあんまり誰も何もしていないからこうなっているのか…みたいな所がわかって、じゃぁやるかってなったんですよね。 当時大学生だったんですけど、普通のプログラミングの講義みたいなものがあって、裏側はこうなっているのかふむふむ、みたいなのを学んでいてので、その関連から今は自分ができる最適化っていう所でコミットできるかなと思ってやっているという感じですね。
意図的に情熱を傾けないみたいなことは意識しているかもしれない
金子:卜部さんの関わり方って、ソフトウェアのコードそのものをいじることよりも、一線を離れるというか敢えて引いている感じがするんですが、いかがですか?
卜部:メンテナンスする時は、確かに引いているっていうのはあって。自分がソースコードを書くと変に思い入れができちゃうじゃないですか(笑)。メンテナンスやっている時は冷静な判断ができるように、意図的に情熱を傾けないみたいなことは意識しているかもしれないです。でも、今はそうでもないですね。
金子:他に興味のある言語ってありますか?RubyとC言語以外で。
卜部:自分が知らないものを見たり触ったりするので、一通りは触りましたよ。こないだはRuby Issue Tracking Systemで、他の言語はどうですか?と聞かれたので、そこで回答したりもしましたね。基本的にはプログラミング言語は好きなので、幅広く触ってみていますね。内部作りまで触っているのはRubyだけかもしれないです。
Rubyを長く使ってもらうための活動とは?
小川:僕もひとつ質問があって。Rubyが今後一生このまま使われ続けるかって誰もわからないと思うんですけど、長く使ってもらうための活動って意識されてますか?
卜部:さっきのメンテナンスの話はその方向性かもしれないですね。品質管理によって、多くの人に安心して使ってもらいたいと思っています。一方で、品質として安定しているけれど、あまり更新されなくなってくると、それはそれで使われなくなる可能性はあるので、ある程度は新しい部分も足していかないとなって思っていますが、バランスなんですよね。新しいことやりすぎても使いにくいとかなってしまうので。全く更新しないと古いよねってなってしまうし…難しいんですけど、車輪の両輪で、両方バランスとりながらやっていくってことだと思います。
小川:そういう戦略的な部分も、開発会議などで話されているんですか?
卜部:戦略を意識しているわけではないですが、結果的にはそうなっているかもしれないです。
金子:今は対Pythonみたいな文脈で、機械学習の勉強とかをやっている人も多いじゃないですか。一方で、まだそんなにかもですが、matzは、今「型」について話すこともあって。それでキャッチアップする人が居ればそれはそれで良いと思います。僕も「このAPI変えてほしい」「このAPI外に出したい」とかあるので、そういう所で繋がって、気が付けば変わっていく、みたいな世界になると良いのかなって思います。
卜部:そうですね。あまり一気に変わるとあれなんですけど、Rubyはちょっと変えていこうっていう方向性になっているかと思います。
小川:もうひとつ。金子さんは、エンジニア歴3年でコミット権を持ってらっしゃいますが、短期間で実務を含めてスキルを身に付けられた要因って何だと思いますか?
金子:Rubyの話でいくと、いろんなものがオープンだったんです。日本語のドキュメントがたくさんあったし、ソースコードも読めたし、Rubyの中のことを解説している本もたくさんあって。Ruby Hacking Guideと、Rubyのしくみ -Ruby Under a Microscope-の2つが有名ですよね。そういうドキュメントがしっかりあったので早く身についたんだと思います。
青木:それは、Rubyだからできたんでしょうか?
金子:他の言語でも、できたと思います。他の言語だと日本語で書かれているものが見つかりにくかったりするかもしれないですが。
卜部:プログラミングに限った話じゃないですけど、偉い人が書いたものを読んで実践するのが良いですよね。金子さんはいろんなものをちゃんと読んで実践されているなって思います。
金子:あ、そういう印象ですか?
卜部:はい。僕はあまり読まないので(笑)。さっきの話を聞いていて、そんな印象を受けましたね。ということで、こんな所ですかね。今日はありがとうございました。
金子:ありがとうございました。
最後に
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