マネーフォワードの中の人を知ってもらうため、当社でフルタイムのRubyコミッターを務める卜部昌平が、マネーフォワードのエンジニアにインタビューをするこの企画。 今回は、エンジニア兼ディレクターの西方さんへのインタビューです。
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語り手
西方夏子 (エンジニア) 2000年よりソニーにて組み込みソフトウェアの開発に従事。2007年、夫の転勤に帯同してドイツへ渡る。2009年よりiOSアプリの開発を始め、当時リリースしたローン計算アプリ「iLoan Calc」は現在も開発を継続中。2012年には『iOS 5プログラミングブック』(共著)を執筆。同年に、第一子となる長女を出産する。その後、『iPhoneアプリ開発エキスパートガイドiOS 6対応』、『上を目指すプログラマーのためのiPhoneアプリ開発テクニックiOS 7編』(共に共著)や、『UIKit徹底解説』、『Swift+Core DataによるiOSアプリプログラミング』(共に単著)を執筆したのち、2016年2月より株式会社マネーフォワードに在籍。
聞き手
卜部昌平 (Ruby開発者)
その他
青木香菜子 (広報・書き起こし・編集担当) 小川昌之 (人事・撮影担当) 井上玲 (人事)
西方夏子 インタビュー
エンジニアじゃない自分は想像したことがない
卜部:西方さんは、何冊か本を出版されていますよね。どんなきっかけで何冊も出版されることになったのでしょう?
西方:元々開発Tipsを集めたブログを書いていて、それがきっかけで声をかけていただきました。最初は共著でiOS 5の内容をベースにした本を2012年に出版しました。iOSがバージョンアップされるたびに同様の企画が続き3年間で共著を3冊、その後単著で2冊書いています。
卜部:その時は今よりも比較的執筆時間がとれていた?
西方:初めて執筆した際はドイツに住んでいて、出産前だったんです。その前からアプリ開発やブログはやっていて、子どもが生まれたらどうしようかと考えていた時に声をかけていただいたという感じです。
卜部:なるほど。後ほどゆっくりお伺いしたいですね。では、まずは自己紹介というかプロフィールをお願いいたします。
西方:私は元々、ソニーで組み込みソフトウェアを開発していました。ハードに近いところで、ドライバーやミドルウェアを書いていまして、7年程在籍していました。退職後は5年程ドイツに住んでいましたが、その間にiOSの開発をスタートし、初めてアプリをリリースした時はiOS 3(iPhone OS 3)でした。
最初に出したアプリがローンの計算をする「iLoan Calc」というアプリです。そちらは今でも現役で開発しています。その後、何年か経って出版の話をいただいて、日本に帰ってきてからもしばらくは本の仕事を中心にフリーランスとして働いていましたが、昨年マネーフォワードに入社しました。
卜部:今でもご自身でつくったアプリは使われてるんですか?
西方:はい。自分でも使っていますし、開発も続けています。
卜部:お仕事はずっとエンジニアとのことですが、何がきっかけだったのでしょうか?
西方:高校生くらいの頃から、エンジニア以外の自分っていうのは想像したことがないんですよね。エンジニアである父親の影響が大きいのかもしれません。
井上:お父様の影響以外にも何かあるんでしょうか?
西方:数学や物理がすごい好きで、一方で、国語とか社会は苦手意識があったんですよね。
井上:そういうベースがあって、ご自宅ではエンジニアのお父様がいらっしゃるという環境があって。
西方:そうですね。そういう環境だったこともあり、自分にとって自然な流れでしたね。本当に自然と、興味の向くままに高校から大学へと進んでいったらこうなっていたという感じです。大学での専門は、音響や画像の信号処理で、その時もC言語とかを書いていましたが、どちらかと言うともっとハードよりで、VHDLとかDSPのプログラミング辺りをやっていました。
卜部:音響でハードウェアとは、と思ったんですけど、DSPとかだったんですね。大変そうです。今やられていることとは若干隔たりがあるんですね。
ドイツ生活中に開発、執筆、出産を経験
卜部:マネーフォワード入社前のことをもう少し聞きたいです。
西方:大学での研究は楽しくて修士課程までは進んだのですが、そのまま博士課程に進むか就職をするかというところでかなり悩みました。ただ、大学は一旦社会に出てからでも行けるかもしれないと思って、ソニーに就職しました。
卜部:それまでのご専門に近かったんですね。
西方:そうですね。なので、楽しかったです。ミドルウェアやドライバーを中心に製品開発に携わっていましたが、夫のドイツへの転勤が決まり、付いて行くために退職しました。ドイツに行ってからは1度仕事から完全に離れ、2年くらいは専業主婦でした。
その間にドイツ語の勉強をして、それはそれで面白く、結構話せるようにもなったんですが…やっぱり暇で(笑)。現地で大学に行くか、就職するかなど色々考えていた時にちょうどiPhoneのSDKが公開されて、それに飛びついたんです。
卜部:では、その流れでiOSのSDKの話等をブログや本に書かれていた後に、日本に戻ってこられたんですね。
西方:そうですね。出産してしばらくして帰ってきたんですが、それが2冊目を書いている頃でした。当時は子どもが8か月で、そのタイミングでの再就職は難しい気がして、保育園に預けて自宅で仕事をする生活がスタートしたんですね。徐々に仕事の量を増やし、執筆の仕事を中心に、大学の研究室との共同開発でアプリを作ったりもしていました。
卜部:フリーランスっぽい動きが取れるようになったのですね。
西方:はい。そして、入社する1年程前にアプリのマネーフォワードを使い始めたんですが、あまりの便利さにすごく感動したんですね。と同時に「ここを直したい」「もっとこうしたい」とも思って、採用サイトを見るまではしたのですが…日本を離れて出産をし、復帰の準備もなく帰国したので、踏ん切りがつかなかったんです。
卜部:とは言え、マネーフォワードにはいつか入社したいと思っておられたんですね。
西方:当時は、「自分とは違う世界だ」と思ってあまり真剣に考えていなかったのですが、ある日、また会社勤めをしてみようというタイミングがやってきて、応募して入社に至ったという感じです。
会社員に戻った今のほうが働きやすい
卜部:今は入社されて1年くらいですが、ギャップなどありましたか?
西方:ギャップはそんなになかったですね。いちユーザーとしてアプリも使っていましたし、働き方みたいなところも含めて、大きなズレはなかったです。
卜部:前の会社員時代とは違い、お子さんがおられることは大きいと思いますが、その辺りはなんとかなっていますか?
西方:そうですね。大変なこともありますが、想像していた範囲には収まっているなと思っています。
青木:以前、西方さんは「会社に通う方が仕事がしやすい」って仰っていましたよね。
西方:はい。それは圧倒的にそうだと思います。フリーランスって、子どもが居ても家で働けるので「いいね」って言われることもありましたが、「いつでも仕事ができる」というのは、「いつも休めない」とほとんど同義なんですよね。
卜部:なるほど。切り替えが難しい?
西方:切り替えもなんですが、依頼する方も「いつでもできるよね」というスタンスで依頼してきます。子どもが熱を出そうが、「家が仕事場なんだから、いつでも仕事できるよね」と。仕方のないことだと思いますが、私にとってはその生活だと「休む」という感覚がなくなってしまい、フリーランスをやめたきっかけのひとつになりました。
子どもは乳児のうちは寝てばかりですし、抱っこしてれば大丈夫ですが、自我が芽生えてくるとそうもいきません。家に居るのに「ちょっと待ってね」と言うばかりになってしまい…。子どもからすると親が居るのに「なんで?」となりますし、だったら親が仕事に出かけていく方が理解してもらいやすいんですよね。
卜部:たしかに、子どもにとっても「お母さん、今お母さんじゃないから」って言われても困ってしまいますよね。
西方:そうなんですよね(笑)。
サービスを届けるため、コード以外に重要なこと
卜部:では、入社されてからのお仕事内容を教えていただけますか。
西方:入社する前には、いずれは企画もやりたいと話した上でiOSエンジニアとして入社したんですが、いずれではなく入社してすぐ企画からはじまったという(笑)。最初は、FPさんにチャットでお金の相談ができる「Money Ask」というトライアルサービスを企画しディレクションをしていました。今は、自動家計簿・資産管理サービス「マネーフォワード」の企画・ディレクター兼PMみたいな感じで、割となんでも屋です。
卜部:現在のご担当領域を詳しく教えていただけますか。
西方:今のアプリに「MY通知」と呼ばれるお知らせ機能があるのですが、今後はそこをさらに拡張していく予定です。現状だと、高額の入出金や残高低下時にアラートをあげる仕組みを提供していますが、それらを広げていくイメージですね。「クレジットカードの利用額が先月を超えています」とか、「先月このタイミングでこれくらい振り込んでいたけど、今月は大丈夫ですか」といったように、アラートやリマインドに加え、クーポンなどお金を使うのが楽しくなるような情報の提供も考えています。他にも、自分と似た行動をしている人のお金の使い方をレコメンドしてくれるような機能の検討もしています。
卜部:良いですね。アプリの全体感だったり今後の世界観についてはどんな構想がありますか?
西方:それがまさに「MY通知」なんです。今のアプリでは、自分のデータを蓄積して現状を把握するところまではできています。次は、「今あなたの家計はこうだからここを改善するといいですよ」という情報を届けていきたいと思っています。次にすべきことをユーザーに選択させるのではなく、今後どうすべきかを示してあげられるような世界観を目指しています。
卜部:確かに、「高額の引き落としがありました」と通知がくると、「おっ」と思います。みてみると、「あ、カードだったか」みたいな(笑)。では、それをスマートに、ある程度自動的にやっていくということですか。
西方:そうですね。
卜部:周りのメンバーとの関わりはどんな感じです?
西方:今は企画とPMが五分五分で、アプリのリリース前はエンジニアと連携して機能確認をしていることが多いです。終盤の細かい修正であればコードレビューもしていて、スケジューリングやアサインもやっています。
卜部:コードをみれるのは、作っている方は安心だと思いますね。
西方:そうかもしれませんね。エンジニア以外ですと、企画メンバーとは諸々の機能検討をしますし、マーケチームとの関わりも深いです。例えば、マーケが出してくれた数字を元に一緒に企画を考えたりもします。
卜部:やりたいこと観点と、数字観点と両方の機能があるんですね。組織的な規模ってどれくらいですか?
西方:今はインターン含めて17人くらいです。エンジニアが8人、マーケと企画が6人、デザイナーが3人です。1年前と比べると大きな組織になりましたね。
卜部:今後の組織をどうしていきたいとかありますか?
西方:人が増えるのは嬉しいことでありつつも、急には立ち上がれないので、そこの業務分担と、属人的な部分の解消がポイントだと思っています。社歴が長い人に聞かないと不明なことが増えると、そこがボトルネックになるので、ナレッジを共有して誰でも開発できる組織をつくっていくべきだなと。
卜部:今のマネーフォワードのアプリってすごく大きくなってきていて、入社したばかりの人が全体を見渡すのは大変だなというのは確かにわかります。
西方:そうですね。機能も多岐にわたりますし、iOSとAndroidそしてWebもあって、それぞれでちょっとずつ違う部分もあるので。
卜部:そんな中で、個人としてはどう立ち回っていきたいかとかありますか?
西方:私がコードを書くことにこだわらない理由として、「サービスを世に出したい、つくりたい、使ってもらいたい」というのが一番にあるからなんです。その目的を達成するには、必ずしも私がコードを書く必要はないなと。企画や情報の整理、ディレクションなどをしている方が、結果的にチームとしての開発スピードが上げられるのではと思っています。
その上で、最もやっていきたいのは、情報の整理ですね。例えば、企画とエンジニアの認識のずれでアウトプットが違ったとか良くあるじゃないですか。そのままいくか、やり直すかという議論が発生すると思いますが、それを極力減らしていきたいです。
卜部:そうですね。お願いしますって言って、出てきたものが「それは違う」となると、お互い「おお…」と、なりますもんね。交通整理は大事ですよね。
ドイツは、聞いた瞬間に「行くぞ」と
卜部:そろそろ、ドイツの話を伺いたいんです。その時はご主人が転勤になって、単身赴任と付いて行くの二択があったと思うのですが。
西方:実は単身赴任という選択肢はなかったんです。2人とも行かないか、2人で一緒に行くか、の二択でしたね。駐在するか、そのままの生活か、という。
卜部:その話を聞いた時は、もうご自身の中では「行くぞ」という感じだった?
西方:はい。聞いた瞬間に「行くぞ」と思ってました。
卜部:ふって気軽に行くものじゃないと思うんですけど、ドイツには良く行かれてたんですか?
西方:全くなかったです(笑)。赴任することが決まってから初めて行ってみて、そこでどんな国かを知りました。
卜部:いきなり暮らしてみてどうでした?
西方:最初はすっごく大変でしたね。慣れてしまえばなんてことなかったんですけど、すべてが日本のようにはいかないので。最初は色々買い揃えなくてはいけなかったのですが、配送にしても絶対に時間通りには来ないですし(笑)。賃貸の自宅も色々すぐ壊れるんですが、誰も驚かない。誰かを呼んで修理するんですけど、修理の人もまた時間通りにはこない。それが普通でした。
卜部:そういう文化的な面で結構カルチャーギャップを感じられたわけですね。気候は辛くなかったですか?
西方:事前に「ドイツ転勤は冬には行かない方がいい」とアドバイスを受け、夫は5月、私は7月に行ったので気候は大丈夫でしたが、初めての冬は相当辛かったですね…。
卜部:寒さが尋常じゃないとかですか?
西方:寒さよりも、日が暮れるのが早いんです。15時半か16時には日が暮れはじめるし、朝日が昇るのも8時くらいなんで、寒さよりもそれが辛かったですね(笑)。
卜部:それは辛そうだ……。
西方:そうなんですよ。なんか、ふさぎ込むというか(笑)。
卜部:現地でふさぎ込まないように努力してたこととかあります?
西方:……いや、ふさぎ込んでましたね(笑)。
一同:(笑)。
卜部:結構長い間住んでらっしゃったんですよね。結局どうでした?楽しかったですか?
西方:5年半ですね。最後は楽しかったですね。当初の予定より2年くらい延びた感じです。夫の会社とプライベート、日本に帰ってからの都合など色々ありましたけど、家族にとって丁度良いタイミングで帰ってこれたなと思っています。
今後ドイツへ行く人へ向けて
青木:ドイツって食生活とかはどうでした?
西方:外食だと、最初の2週間は楽しめると思います。でも、肉!じゃがいも!とかそんな感じです。あとは、やっぱりビールは美味しいですね。
卜部:でも、普段の食生活って感じじゃないですね(笑)。
西方:普段は自炊してましたね。野菜とかは普通に売ってるので。しなびてるけど(笑)。それもカルチャーショックのひとつで、しなびているだけなら全然良くて、たまねぎとかそのまま積んであるんですけど、取ると下からハエがぶわーって出てきたりとか(笑)。それが普通でしたね。かびてる、腐ってる、でも売ってるし、選ぶのは自分の責任です。
青木:ヨーロッパって硬水だからすぐにシンクが白くなって掃除が大変って聞いたこともあります。毎日掃除しないとすんごく白くなるとか…。
西方:そうですね。ミュンヘンは特にすごくて、白い塊ができます(笑)。白くなるだけじゃなくて、水回りはつまってくるんですよ。それを取る薬とかがあるんですが、そんなの誰も教えてくれないので(笑)。
卜部:今から行く人にアドバイスとかあります?これ読んでる人がドイツに行くかもしれないので。
西方:日本と比べると本当に色々不便です。日曜にすべてのお店が閉まるので、買いものもできない。日本は、時間指定すると宅配もちゃんと来てくれますが、ドイツはその日の配達に間に合わなければ持ち帰ってしまうのが普通です。そういう不便が最初はストレスになりましたが、受け入れると楽になりましたね。
だから、行ったら「そんなものだ」と、受け入れると良いと思います。自分の物差しでイライラしてしまうと辛くなりますし、解決にならないんですよね。
卜部:なるほど。一旦受け入れると良いと。
西方:あとは、夏に行った方が良いです!
一同:(笑)。
洋裁とプログラミング
卜部:日本に帰ってきてからのお子さんとの私生活はいかがですか?
西方:大変ですね(笑)。
卜部:どれくらい大変かを話していただければと(笑)。
西方:先日ふと考えてみたら、会社に居る時間、通勤時間、家で育児や家事をしている時間を差し引くと、残るのが7時間くらいしかなかったんです。
卜部:もう寝る時間しかないじゃないですか。
西方:そうなんです。この約7時間を睡眠と自分の時間に充てるしかなくて。たくさん寝たいけどやりたいこともあるし、それとの戦いですね、いつも。
卜部:どうやって時間をつくれば良いのかなってことですね。
西方:通勤はお迎えなどを入れて1時間ちょっとですが、帰りは私が娘をピックアップします。バスで駅まで送ってくれるので、その時間までに駅に行けるよう退社しています。
卜部:バスの時間までにそこに居なくちゃいけないって、意外と大変ですよね。
西方:そうですね(笑)。
卜部:週末はお子さんと過ごされているんですか?
西方:そうですね。気づくと家事で終わってしまうことが多いので、週末にたまった家事をするのをやめてみて、1か月が経ちました。
卜部:理想と現実はあれど、なかなか大変ですよね。自分の趣味の時間みたいなものも取れていない?
西方:そうですね。ほとんど取れていないですね。
卜部:もともとはどんな趣味をお持ちだったんですか?
西方:アプリはほぼ趣味に近くて、時間があればアプリ開発もしています。それ以外には洋裁が趣味で、子どもの服とかを作っています。昔は自分の服を作っていたりもしていました。
卜部:洋裁とプロミングってなにか共通点ありますか?
西方:ばらばらのパーツが組み合わさって物ができていく様というか、物ができていく楽しさという点では、似ているかもしれません。
卜部:保育園なり幼稚園に入ると、持ちものが増えて大変かもしれませんね。
西方:幼稚園に入ると通園バッグみたいなものがたくさんあって、サイズや種類も多くて、すごく大変だと思ったんですが、やり始めてみると「私はこれを作っている間は誰にも文句を言われないぞ」と思うと楽しくなって。少し多めに作ったりしていました(笑)。
卜部:(笑)。
ママの絵本は、どの本屋さんにあるの?
小川:お子さんは、「お母さんはどんな仕事をしてる」っていうのは理解されているんですか?
西方:本を書いていたことは理解しています。絵本だと思っているみたいですけどね(笑)。「ママの絵本は、どの本屋さんにあるの?」っていつも聞かれます(笑)。けれど、それ以上のことはたぶん理解していないですね。
小川:お子さんが遊べるアプリを作ってあげることとかもあるんですか?
西方:ないですね。子供が産まれてからは小さい子ども向けのアプリは作ったことがないし、作らないつもりでいるんです。自分の子ども用のアプリとか、出産前は「そういうものを作るのかなぁ」と思っていましたが、いざ産んで目の前の我が子を見ていたら、私は子ども向けのアプリは作りたくないって思ったんです。
真剣になりすぎてどこかで一線を越えてしまった時に、自分で自分の子どもをテスターにしてしまうのでは、という怖さがあるんです。自分の気持ちをコントロールできる自信がなくて。「良いものをつくりたい」と思ううちに、「これやってみて」と自分の子どもに対してお願いすることが重なっていくんじゃないかなと。
なので、基本的には今は子ども向けのものは一切つくってないし、子どもがアプリやiPhone自体を触ることもほとんどないですね。
小川:そうだったんですね。
西方:子どもは私のiPhoneを「写真が撮れて、見れて、あとはママのお仕事の道具」と思っています。
卜部:自分は作らないけど、子ども向けにこんなアプリがあったらいいのにって思うこともあまりないです?
西方:もう少し大きい子ども向けとかは思うことありますが、それよりも自分用にほしいです(笑)。お母さん向けはいくつでも案は出てきますね。
卜部:5歳くらいならひとりで出歩くこともないし、目が行き届くから必要ないのかもしれませんね。お母さん向け、何かやってみると良いんじゃないですか?
西方:3つくらい途中までいって、時間がなくて挫折してしまったんですけどね。
卜部:自分が日々ほしいと思っているものを作るってすごく健全ですね。どれか形になると良いですね。
西方:そうですね。ちょっと時間が……(笑)。
青木:最も時間がかかることって何でしょうか?
西方:料理は手がかかりますね、とにかく毎日のことなので。とは言っても集中してやればすぐ終わるんですが、娘の話を聞くために手を止めて中断してしまうので、時間がかかるんですよね。
卜部:ああ、そうですよねぇ。
西方:平日は帰ってきてから「ぬりえ塗ったよ、みてみて」「なんとかちゃんと何やったよ、みてみて」とか。それに時間がかかります(笑)。
卜部:そこは機械に任せられないし、可愛いですしね(笑)。
その時々で最善なことを考えれば良い
卜部:読者に向けて、人生を振り返ってみて「もっとこうしておけば良かった」「こうした方がいいよ」みたいなことってありますか?
西方:子どもはいたら楽しいですし、幸せだなって思います。でも、絶対に子どもがいた方が良いとは思わないですし、そうじゃない人生も楽しいかもしれない、とも思います。ただ、子どもが居ても働くことって諦める必要はないし、私も実際に働けています。
あとは結構、働いていて良かったなって思うことも多いです。元々の性格にもよると思いますが、朝から夜まで子どもと一緒だと疲れることもあって、その点仕事をしていると気分転換にもなりますし。
だから、その時々で最善なことを考えると良いのかなって思います。私の場合は急にドイツに転勤になったとか、帰国後は子どもがいて再就職が難しかったとか、そんないろんな状況がありましたけど、だからなんだっていうことでもないなと。
その時に自分が一番こうしたいって思うところに進むのが、自分にとっても一番納得感があるし、良いのかなって思います。
青木:良い話です…。最後に、西方さんから卜部さんに聞きたいこととかありますか?
卜部:おっ逆インタビュー。
西方:おっと…緊張する(笑)。えっと、私と卜部さんって、ほぼ同時期入社ですよね。私はエンジニアの中でも、ハードに近い所からアプリまでやってきているんですけど、サーバーサイドってあまり知識がないんです。卜部さんは今はRubyを中心に書かれていますが、他のところへの興味っていかがですか?
卜部:実は僕のキャリアも低レイヤーのところからスタートしているんです。インターネットのルーターとかを書いたりしていまして。あれも実はDSPと近い領域なのかなぁと。ハードウェアがあって、そこからサーバーよりの方もやっていたりもします。
だからある程度ハードウェアよりのところも楽しいよね、でも、その頃働いていた人たちはすごくハードウェアがっつりで、オシロスコープで見てクロックずれてるよねとか言い出す人たちだったので、あ、だめだこの人たちには敵わないぞって思ったんですよね。
西方:そうだったんですね。私もそんな時代ありましたよ(笑)。
卜部:当時は、電気通信大学のネットワーク系の研究室に所属していたんですよ。
西方:同じです。私も電気通信大学でした。
卜部:おお、そうでしたか。電通は、電波系とかがあったりもしましたね。ある程度、出発点は近いんですね。
西方:会社の中で、どのサービスにも直接は関わっていらっしゃらないと思いますが、直接直したいとか関わりたいっていう気持ちになることはありますか?
卜部:ありますね。ただ、ある程度大きなサービスになってきているので、僕が「ここ直したいな」って思うことって、裏側に複雑な理由があるかもしれない。社内で僕がチャットとかで「このサービスのここがこうだといいのに」とか言うこととかも、素人の視点なんですよね。
それが大事だという観点もありますが、一方で理由もなく作られているソフトウェアってなくて、作られているからにはそれなりの理由があるんですよね。そこを直そうって切り込んでいくと、その背景にある事情みたいなところに切り込んでいく方が大きくなるんじゃないかなという気がします。
西方:確かにそうですね。私も似たようなことを感じることがあります。iOSの文法的ことは私にもわかりますが、それでコードの文法が明らかにおかしいことには気付くけれど、設計はどうなんだろうと思ったとしても、仰る通りですごくいろんな大きな背景があってそこに至ってるんだよなと。だから、小さい変更のところのレビューはできるけど、大きな実装のところは私はわからないし、口は出さないようにしています。
卜部:pull requestの先頭にこれはこれでこういうやつ…でみたいなesaのリンクとか貼ってますよね。あれは結構見やすくていいですよね。
西方:そうですね。
卜部:ソースコードだけ、どーんって貼ってあってもこれはなんだってなりがちですが、一応解説が書いてあるので、この解説とこの実装があっているのかくらいはわかるから、そのくらいはできるかなっていう感じです。
西方:では、基本的にはうちのプロダクトにはpull request出すとか、コミットするみたいなことは今はされていないんですね。
卜部:そうですね。やれるとすると、ぱっと見てわかるあきらかな誤りとかになると思うんですけど、それはきっと皆さんがすでにやっていますしクオリティは高いと思いますので、わざわざ僕がでばっていかなくても、お任せすれば良いかなと。
西方:なんか、いろいろ共感しました。ありがとうございます。
人が変わるのを待たないと、便利にならない
青木:卜部さんから、マネーフォワードのサービスに向けて意見とかありますか?
卜部:僕は奥さんと一緒に見たいので、Web版を使っているんですが、そこまでないですねぇ。奥さんが「よそQを見たい」というので、プレミアム会員になりました(笑)。ちらっとだけ見えてここから先は有料会員向けですっていうのが、うちの奥さんには刺さったようです。
西方:ありがたいです(笑)。
卜部:「この先をみたいよ」からの、課金ですね。僕自身は、通知が飛んできてメールから見ることが多いです。自分では普段は意識していないけれど、アラートが飛んできて、「おっ」て思って見に行くと、そこから先はいろんな情報が出てるので、しばらく見てみるみたいな感じですね。
西方:そうなんですよね。ものすごく意識高くないと、毎日毎日家計簿のデータとかって見てられないじゃないですか。
卜部:マネーフォワードというアプリが、皆の意識を高めていきたいのかっていうとそうではなくて、意識せずとも家計簿をつけられますよっていうものですしね。
西方:私はこの会社に入る前は、自然と意識を高めていけるとか、世の中がそうなっていけばいいなって思ってたんですよ。もちろん、それはそうなっていけばいいけど、それだと、人が変わるのを待たないと便利にならないじゃないですか。人が変わるのを待つより、誰でも使えるものを作った方が早いしそうすべきだってことに気付きました。
卜部:そうですね。だからこそ、途中でドロップアウトしていく人とかが、より継続して使っていけるサービスにしていけると良いですよね。
最後に
今回のインタビューを読んで、マネーフォワードに興味を持たれた方は是非、以下のボタンをクリックして頂ければと思います。
【採用サイト】
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