マネーフォワードの中の人を知ってもらうため、当社でフルタイムのRubyコミッターを務める卜部昌平が、マネーフォワードのエンジニアにインタビューをするこの企画。 第二回目となる今回は、Railsエンジニアで、自動家計簿・資産管理サービス「マネーフォワード」のエースエンジニアである鈴木信太郎へのインタビューです。
社員ですら初めて聞くような、マネーフォワードに関わる人のストーリーをお届けします。
▼過去のエンジニアインタビューはこちら マネーフォワードエンジニアインタビュー 谷口徹「BtoBはユーザーとの距離が近い」
日時
2016年 7月 25日 (月曜日)
語り手
鈴木信太郎(エンジニア)
2005年 国立長野高専電子情報工学科卒業
2005-2010年 色々あった。
2010年1月 KLab株式会社に入社。ソーシャルゲーム基盤開発を経て、数タイトルの開発リーダーを担当。
2013年3月 株式会社カカクコムに入社。新規事業立ち上げを担当。
2015年2月 マネーフォワードに入社。現在は、PFMサービス開発部の開発グループのリーダを務めており、家計簿サイトの改善に尽力している。
聞き手
卜部昌平(Ruby開発者)@shyouhei
ガヤ
- 越川直人(エンジニア) @ppworks
- 小川昌之(人事・写真担当)
- 平野紗希(書き起こし・編集担当)
鈴木信太郎インタビュー
モノポリーから始まったエンジニアへの道
卜部 前回のエンジニアインタビューに引き続き、第二回目となる今回は、エンジニアの鈴木信太郎さんにお話をお伺いします。鈴木さん、よろしくお願いします。
鈴木 よろしくお願いします。
卜部 さっそくですが、鈴木さんはどのような経歴をお持ちでしょうか。
鈴木 最初に入社したのは、韓国に開発チームがあるオンラインゲームの会社でした。そこではエンジニアではなくゲームマスターとしてCSを1年間ほどやっていました。 その後、エンジニアとやりとりをするうちに自分でも開発がやりたくなって、Web制作会社に転職しました。 実は、最初の会社に入る前、大学を中退して山籠りをしていたので、転職時まだ22歳ぐらいでした。
卜部 山籠りですか。気になりますね。この話は後ほど詳しくお聞きしましょう(笑)途中で自分も開発がやりたくなったということは、もともとプログラミングをやっていたのですか。
鈴木 そうですね。コンピューターに触るのはかなり早くて、小学校5年ぐらいからコンピュータで遊んでいました。そのときは好きにいじったり、BASICのコードをただ書き写したりしていました。中学校3年のときにインターネットで遊び始めました。当時、僕はネットモノポリーのコミュニティに参加していたのですが、そのコミュニティの中に、対戦結果を集計している掲示板がありました。人が手作業でエクセルに打ち込んでいるサイトでしたが、僕はそれを自動集計できるものをつくりました。それが自分のプログラマとしてのはじめての経験です。 「たまたま家にコンピュータがあって、たまたまネットモノポリーをやっていた。」というのがコードを書いたきっかけです。
卜部 転職後はどのような仕事をしていたのでしょうか。
鈴木 Web制作会社では2〜3年の間、PHPを使って、様々な企業のサイトをつくっていました。 そして、ちょうどその頃ソーシャルゲームが流行り始め、KLabに転職しました。 KLabではたまたまソーシャルゲームの立ち上げから参加することになり、開発をしていました。おかげさまでソーシャルゲームの成長とともに自分も成長することができました。 そこで3年ぐらい働いた後、会社を辞め、仲間と事業を立ち上げたのですが、半年ぐらいでうまく立ち行かなくなってしまい、もう一回サラリーマンをやることを決意しました。
そして、前職であるカカクコムに入社しました。 カカクコムでは役員直下で新規事業の立ち上げに携わりました。そこではじめてRubyを触りました。
ユーザー数1万人弱とのときからマネーフォワードを使っていた
卜部 その後なぜマネーフォワードへ入社したのでしょうか。
鈴木 まず、僕自身がマネーフォワードのユーザーだったため、カカクコムにいた2013年からマネーフォワードのことを知っていました。 また、僕が所属していた新規事業の部署には、エンジニアがもう一人いて、よく彼に「マネーフォワード便利だから使ってみなよ」といった話をしていたんです。 たまたまその彼がマネーフォワードのエンジニアと面識があり、瀧さん(当社役員)とランチをする機会があったんです。 2014年7月、まだマネーフォワードのオフィスが恵比寿にあった時代です。
その後、会社の懇親会に誘ってもらい約1年後に入社しました。
卜部 2013年の初期から、マネーフォワードを使っていたというのはすごいですね。
鈴木 入社して自分のIDを見る機会があったのですが、僕はIDが4桁でした(笑)
卜部 最初の1万人に入っているということですね。
越川 それはすごい。私は50万人目ぐらいでした。
鈴木 それでもまだ早い方ですね。今や350万人以上の方に使っていただいていますからね。
卜部 もともと自分が使っていたものを、今は自分で作っているというのはどのような感覚なのでしょうか。
鈴木 そうですね〜。 やはり、創業間もないベンチャーは大変でした。自分が思っている以上に完璧ではない部分ばかりで…。 ユーザー側からだと気づかなかったのですが、いろんな課題が次から次へと出てきました。 おかげで仕事には困らなかったです(笑)
卜部 逆に、「ここは想像していた通りだった」というところはありましたか。
鈴木 最初、瀧さんに会った際に感じた、金融に対する”ベンチャースピリット”というか、「これから俺たちがこの業界を変えていくんだ」という情熱はもともと想像していた通りでした。 あと、僕はもともと金融システムに興味があったので、僕みたいに金融業界に対する何らかの考えを持って入社してきている社員がやはり多いというところですね。
"マネーフォワードの土地勘"を活かしたサービス作り
卜部 鈴木さんはマネーフォワードで、普段どんな仕事をされているのでしょうか。
鈴木 今は、主にマネーフォワードのサーバー側を作っています。 例えば、アプリで新しい入出金データを引き出すリクエストが合った時に、そのデータを返すAPIを作っています。最近ですと、カカクコムのAPIを叩いてクレジットカードのランキングを表示できるようにしました。 また、新しい機能をマネーフォワードに加えるときに、他のメンバーと議論を重ねて、形にしていくといったこともしています。
また、僕は1年半会社にいて、なんだかんだ古い社員になってきたので、「マネーフォワードの土地勘」を活かしながら仕事をしています。 例えば、データをみたりコードをみたりしないと対応できないお問い合わせの対応もしています。
卜部 一日どのくらいのお問い合わせに対応しているのですか。
鈴木 基本的に、直接的なサポートはCSチームが行っているので、僕が対応するのは2、3件ぐらいです。そのうち調査で済むのが半分くらいで、実際にソースコードの修正をしなければならないのが残りの半分ぐらいです。サーバー側のバグの修正もありますし、アプリのバグの修正もあります。
卜部 さて、次は鈴木さんのマネーフォワードでの働き方についてお聞きしましょう。 これまで様々な会社を経験されていますが、会社の規模によって働き方は変わりましたか。
鈴木 規模によってやることは変わりますが、規模が違うからといって働きやすい、働きにくいというのはあまり感じませんね。ただ、人が多いほうが人にたくさん任せられるようになるので楽ですね。 現在は、マネーフォワードのPFM(個人財務管理、当社では家計簿サービスのことを指す)部門全体で40〜50人の社員がいます。 僕の所属する家計簿の本体の開発をやっているチームは10人ぐらいで、企画4人、エンジニア6人といった割合です。データの分析を企画の人がSQLを叩いてやってくれるので、かなりありがたいです。以前、新規事業を立ち上げていたときは全部自分でやらなければならなかったので…。
越川 1日の時間の使い方はどうでしょうか。自分の時間は作れていますか。
鈴木 だいたいいつも9:30に出社して、家に帰るのが21:30ぐらいですね。 家に帰って、ご飯を食べて、アニメ観て寝ています。 通勤時間は乗り換えを2回して、1時間ぐらいです。
卜部 前回のインタビューで谷口くんが「通勤している時間って僕の人生に何のメリットもない。会社まで徒歩3分の家しか住まない。」と言っていたのを思い出しました。
谷口くんに怒られそうですね(笑) 普段の通勤時間は何をしているんですか。
鈴木 これといって特徴はないですが、通勤時間は、NewsPicksやFacebookをチェックしたり、Kindleで本を読んだりしています。ただ、電車が混んでてスマホが見られないこともあるので大変です。
僕は、会社が家の近くに引っ越してくれているのを待っています(笑)
冬場はウィンタースポーツ、そして夏場は…?
卜部 冒頭で、「最初の会社に入る前、大学を中退して山籠りをしていた」と言っていましたが、何をされていたんですか。
鈴木 冬にスキー場の住み込みのアルバイトに応募し、ワンシーズン丸々リフトを動かしていました。 もともと冬山が好きで、若いころはスキーを毎年していたので、やってみたくて(笑) シーズンが終わったので、東京で働こうと決めて、山から降りてきたという感じです。
卜部 自由すぎ(笑)マネーフォワードにもウィンタースポーツに行く社員はたくさんいますね。
鈴木 そうですね。昨シーズンもマネーフォワードのメンバーとスキーに行ってきました。
卜部 夏場は何をしているんですか。
鈴木 夏場はスポーツはしてないですね。 2年前ぐらいから彼女と一緒に住み始めて、一人でなにかやるということは少なくなりました。
卜部 なるほど〜。2年というと割と長めですね。もうそろそろなのでは…
鈴木 あ、墓穴だった…
一同 (笑)
卜部 じゃあ夏場は、資産管理ですか。さきほど金融システムに興味あるというお話があったので…
鈴木 資産管理はいつもやっていますよ!もちろんマネーフォワードを使いながら(笑)
ゲームはすごく限定的なルールの塊、だからプログラマと相性がいい
卜部 先ほど、モノポリーの話が出ましたが、今でもゲームはやっているんですか?
鈴木 やっています。最近はネットゲームが中心です。 MMOとかFPSは昔からよくやっています。あと、最近ブリザードからオーバーウォッチというのがリリースされて、かなりハマっています。
ゲームはプログラマと相性がいいと思います。 すごく限定的なルールの塊。そのルールを理解して、そのルールの中で限られたリソースを使い、一番効率的な選択をする訓練にもなりますからね。 僕はみんなにおすすめしたいです。
越川 確かマネーフォワードにはゲーム部がありましたね。最近社内のゲーム部はどうなっているのでしょうか。
鈴木 活動していますよ。最近は社外に遠征に行きました(笑) あとは、社内懇親会で毎回人狼大会をやってます。人狼は人間の交渉が発生するので難しいですが、いつもとても盛り上がります。
卜部 あれは、友達なくなる系ゲームですよね(笑)
鈴木 相手を蹴落として自分があがるみたいな性質のゲームは、生きる上であったほうがよいスキルだと思うんですけどね。"だれかに蹴落とされない"という意味で。 ゲームだから疑似体験で済むというのは、よいことなのかなと思います。
一同 たしかに(笑)
ゲームで仕事の練習をしているような感覚
卜部 最近ハマっているというオーバーウォッチの良さは何なのでしょうか。
鈴木 オーバウォッチは6:6のチーム戦で、攻撃を受けるタンク、アタックする人、回復する人など、明確に役割が分かれていて、自分の最大限の努力によって、チームのアウトプットを最大化しながら戦います。
卜部 仕事みたいなものですね。
鈴木 そうですね。ゲームで仕事の練習しているような感覚です。
一同 (笑)
鈴木 人狼もアナログゲームもネットゲームも、ゲームはいろいろなトレーニングにもなるので僕はおすすめしたいです。
オーバーウォッチは最初に自分の役職を決められるようになっています。 最初にチームを編成するときに「俺アタッカーやるよ」みたいな人が何人か出てきたタイミングで「このチームはタンクがいません」といったアラートが出ます。後から入ってきた人がそのアラートをみて自分の役割を選べるので、バランスのよいチームがつくれるようになっています。 回復役が一人もいないチームはもろいし、アタッカーがいないと絶対に勝てないし、バランスよくチームを作らないといけないですからね。
僕は、仕事でも需要サイドから自分がなにをすべきか考えることが多いのですが、これはわりとゲームから来ていると思います。「あータンクいないからタンクやってくれよ」「あーじゃあ自分やるよ」みたいな感じです。
あ、完全にオーバーウォッチの話になっちゃいましたね。
自分の作った機能で自分の生活が便利になる
越川 その観点で言うと、今のマネーフォワードに欲しいチームメンバーはどのような役割の人ですか。
卜部 うまく繋げてきましたね(笑)
鈴木 プログラマですね。 Railsとスマホがもっと欲しいです。特にAndroidが足りてなくて。かと言ってiOSが足りているわけでもないのですが…
あとは、同じ目線、同じ情熱を持っている人と働きたいです。 やっぱり自分の興味分野の仕事をしている人と一緒にいることが、どう考えても一番楽しいです。 あとは自分もそろそろ、成長曲線が急にグイッと上がる年齢ではなくなってきたので、ここから自分が更に成長するために、プログラマとして自分に新たな発見を与えてくれる人がいいですね。
卜部 やりたいことに対してプログラマ不足でまだまだやりきれてないというところですね。 「こんな経験をしてきた人と働きたい」といった思いはありますか。
越川 やっぱ、ゲーム好きじゃないとダメですかね。
鈴木 そんなことはないです(笑)
自分の資産管理に興味を持っている人のほうが楽しいと思います。 自分の作った機能で自分の生活が便利になりますからね。
マネーフォワードに加えたいソーシャル的な機能とはー
卜部 今後、加えていきたいと考えている機能は何かありますか。
鈴木 ちょうど今日の話なのですが、LINE Payのような仕組みで、人のお金の貸し借りをマネーフォワード上で管理できれば、現金のやり取りをなくすことができるのに、と考えていました。
例えば、ランチで同僚に1000円貸しを作っておいたとすると、原理的には次またランチに行った時にその人が借りた人に1000円分おごればいい。それは現金のやり取りではなく、単にデータとして残っていればできるはずなので、貸方借方の記録がつくようなソーシャル的な機能を作りたいと思っています。
越川 仮想通貨みたいにデータとして、ユーザ間でお金を管理し合うことができればいいですね。
卜部 「お金というセンシティブな情報でユーザー同士が繋がるのは抵抗がある」といった意見もありますが、この場合はもともとオフラインでつながっている人とのやり取りなので、実現できそうですね。
鈴木 ソーシャル的な使い方が派生すれば、夫婦で使ってくれているユーザーなど、複数人で一つの連携データを共有することも可能になると思います。今はセキュリティ的にあえてしていないということもあるのですが、世帯を一緒にしている人向けに特定の情報を共有できるようにしていきたいです。
卜部 現在は家族データの場合、アカウント全部を共有することしかできませんよね。今後、共有するデータを選択できるとよいですね。
鈴木 そうですね。 そのためにも、もっとエンジニアが必要です。 そうじゃないと僕がオーバーウォッチをやる時間を削るしかなくなってしまいます…
一同 (笑)
自分はあと何コミット積めるのだろうか
越川 ところで、鈴木さんは◯歳までに◯◯したいといった目標はありますか?
鈴木 僕は現在32歳で、あまりマイルストーンはおいていないのですが、30歳を過ぎて意識し始めたのは、「自分は死ぬまでにあと何コミット積めるのだろうか」ということですね。 あと何コミット分あるかは実際のところわからないのですが、残りのリソースをどう配分してくのかということは考えてますね。 半分くらいマネーフォワードにつぎ込むかもしれないし、もしかしたら10%ぐらいかもしれないです。
卜部 今後、自分でサービスを立ち上げたいといった思いはありますか。
鈴木 2年前にはまさかマネーフォワードに入社しているということは想像もしてなかったので、2年後のことも到底わからないのですが、今はマネーフォワードでやりたかったサービスに携われているので満足しています。
今は仕事が忙しくて…と自分の中で言い訳をしていますが、もともと自分でサービスを作りたいという思いもあるので、(自分でサービスを作っている)越川さんは尊敬しています。
越川 私も最近は、なかなか時間はないですねぇ...。
卜部 マッシュアップ的なものだったら時間がなくてもそこそこできそうですね。
"自分のために"ではなく"人のために"
小川 ところで、マネーフォワードには、BtoB、BtoCのサービスがそれぞれありますが、BtoBのサービスに関わっているエンジニアとの温度感は違うのでしょうか。
鈴木 根本的にはあまり違いはないと思います。 ターゲットは違いますが、やっていることの構造は同じで、ユーザーが持っている潜在的な課題を見つけ出してそれをITで解決していく、といった点では、あまり差がないのかと思っています。
だから、明日からクラウドの開発をやって下さいといったら僕はできる気がしています。マインドは一緒なので。
小川 BtoBはBtoCと違って、自分がユーザーとしてサービスを使わないという違いがあると思うのですが、その辺はどうでしょうか。
鈴木 そこもあまり変わらないのではないかと感じています。 実は、PFMを作っていても、必ずしも自分が使っているものではない場合もあります。「自分のために」ではなく、「人のために」という気持ちで作っているので、「機能として便利だと思う人がいるかどうか」を常に意識しています。
「なにか問題があって、それを解決する」そんな仕組みを作りたい
卜部 最後に、鈴木さんはこれからどういった仕事をやっていきたいですか?
鈴木 「なにか問題があって、それを解決する」そんな仕組みを作りたいです。 それは、必ずしもWebサービスではないのかもしれません。 僕のルーツがモノポリーの自動集計だったので、たまたま開発をやっているのですが、もしかしたら数年後には開発以外のことをやっているのかも、と思っています。
卜部 本日はお時間いただきありがとうございました。
鈴木 ありがとうございました。
最後に
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