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チーム運営の仮説検証サイクルを高速化させるために、新卒スクラムマスターが取り組んだこと

この記事はMoney Forward Engineering 1 Advent Calendar 2022の13日目の記事になります。12日目はmasami moritaさんでAgile Testing Days 2022に参加してきました!でした。

今回は表題について書いていきたいと思います。

はじめに

今年の4月に新卒入社した廣瀬です。マネーフォワードビジネスカンパニー 経理財務プロダクト本部 プラットフォーム開発部に所属しています。 私は、マネーフォワード クラウド会計における技術負債を解消し、長期的な開発生産性の向上を目的としたプロジェクトに従事しています。

当プロジェクトでは、開発手法の一つであるスクラムを導入しており、配属後半年間、開発者兼スクラムマスター(ScM)を担当しています。 ScMは、スクラムを理解し、チームがスクラムを実践できるように支援・推進する役割を持ちます(スクラム・ScMについての参考: スクラムガイド)。

今回は、ScMの視点での振り返りを通して、チーム運営の検証・改善サイクルの高速化のためにやったことについて紹介します。

ScMと開発者を兼任した背景

当プロジェクトは、主に以下のようなモチベーションでスクラムを導入しています。

  • 複数グループ(front/backend専門チーム)によってメンバーが構成されるため、コミュニケーションの密度を上げたい。
  • 技術的な難易度が高く、実現可能性や見積り(全体感)を精緻なものにすることが第一の目的であったため、発足当初から長期的な計画を立てる予定がなかった。

一方、限られた少数のメンバーによって構成されるチームであるため、スクラムに必要な役割の兼務などでメンバーに負担の偏りがあることが課題となっていました。

そこでScM兼任について声がかかり、技術以外の視点からプロジェクトやチームを俯瞰することによる新しい気づきが得れる貴重な機会だと感じ、引き受けました。

チーム運営に対する課題感とアクション

参画して一定期間がたった際に、Retrospective(チームの定期的な振り返り)において、チーム運営(スクラムの活動等)に関してほとんど議論されていないことに気づきました。同時に、スクラム経験のあるメンバーが少なく「正しいスクラムができているのか分からない」という声が上がっていました。

これは中長期的にチーム運営面で課題になると感じ、小さなことでもスクラムの活動を変化させ、検証・改善をするサイクルを推進することで、チームが狙いとする運営方法に向けて試行錯誤できるように努めました。

課題が潜在化していたことについての考察

当プロジェクトは影響範囲が非常に広く、技術的な意思決定をする際は、考えられるメリット・デメリットの洗い出しと十分な議論を通して、慎重に検討する必要があります。当時は私もこの意思決定フローに慣れており、チームに対して、例え小さな変化を生みたいと思っても、同様の議論が必要だという先入観がありました。

また、チームの状態として、技術的な視点での振り返りは充実しており、時間が余ってしまうようなことはありませんでした。 そのため、チーム運営に対して変化を起こす機会が非常に少なく、この課題に気づくことができなかったと考えています。

以上のような背景で、 チーム運営の検証に技術的な意思決定フローを適用する必要はないのでは? と違和感を持ったことがきっかけで、スクラムに対して高速な仮説検証ができる環境を目指そうと決めました。

仮説検証のためのアクション

仮説検証を推進するために、以下のようにチームへの伝え方を変えてみました。

  1. 変化に対して、特に仮説を重視して説明すること

私たちのチームは、目的を重視して意思決定する傾向にあり、目的に対する納得感が少ない時に、実行に移しにくいという感覚がありました。仮説を提案し「とりあえずこれを確かめてみたい」といった伝え方で受け入れられやすくなったように思います。

  1. 合意を求めるような言葉遣いではなく、牽引・促進できるような言葉を選ぶ

当初、チームの合意を根拠として検証しており、合意を求めるような受動的な言葉選び(例: 〇〇が良さそうですがどう思いますか?)をしていたと感じています。そこで、「とりあえずやってみましょう!」のような言葉遣いに変えてみたことが、推進力を生み出せた要因として大きいと思っています。

例えば、以下のような伝え方で半年間変化がなかった、Retrospective(チームの定期的な振り返り活動)に使うフレームワークを変えてみました。

Retrospectiveのフレームワークを、Win/Learn/Try (参考: Mercari Engineering Blog)に変えてみたいです。 これまでと比較してよりポジティブな成果にフォーカスが当たりやすくなることや、課題発見の切り口が変わり、新しい発見があるのではないかと仮説を持っています。 これまで事実として確認はできていないと思うので、とりあえず来週やってみましょう!

ただし、納得感が得られない、または疑問を感じたメンバーがいれば、発言の直後にフィードバックがあるという前提に立っています。 改善サイクルが定着していなかった頃は、この前提を揃えておくことや、「違和感がなければ」のような枕詞を使うことを意識していました。

振り返りと改善に向けたアクション

チーム運営の改善を促進するために、Retrospectiveの中に、Retrospective of Retrospective というセクションを取り入れました(前述のメルカリ社の記事で紹介されていました)。

現在、私たちのチームでは、このセクションに5-10分ほどかけています。メルカリ社の内容と比較して、直近のスクラム活動全体の振り返りにスコープを広げることと、改善案をチームで発散することを目的として活用しています。

結果

当初、かなり少なかったチーム運営に対する検証と改善は習慣づけられました。メンバーからも長期的な目線で、継続的改善フローに対してポジティブな変化があったとコメントをいただきました。Retrospectiveの中で、毎回必ずスクラムに関するフィードバックがあり、大小様々なアイデアがメンバーから提案され、検証と改善を回し続けています。

具体的な結果として、直近3ヶ月の検証で「Retrospectiveにはどのくらい時間を使うべきか」という観点だけでも、私たちのチームでは以下のようなものを得ることができました。

  • フレームワークや各自の準備、構成の工夫で、1.5時間分の議論を1時間でも成し遂げられる。
  • 状況によっては上記が難しいこともあるので、毎日の困りごとや学びの共有を通して、時間を伸ばすことを検討するべきである(伸ばすべきかは事前に予測できる)。

直近ではGoogle Docsを使用し、以下のようなテンプレートで振り返りを実施しました。先ほど紹介したWin/Learn/Try のフレームワークを、個人・チームのもので分けるなど、少しアレンジしています。

改善活動の習慣化は、今回焦点を当てたRetrospective以外のチームの活動にも生かされています。積極的にとりあえずやってみよう!という文化がチームに浸透したことで、技術的な意思決定のような慎重さがあった配属当初の文化から大きく変わったと感じています。

また、限られた少数のメンバーで構成されている今の状況において、検証改善がチームで自然と回るようになったことは、私が開発者としてアウトプットする機会が増える良い変化にもなりました。 兼任による時間の足りなさは自然と発生しています。一方、チームの状況をみた上で、アウトプットを開発に振る機会が徐々に増えてきたのは事実として感じています。しかし、私たちのチームはこれまで、専任のScMの方が長期的に参画した実績がありません。これは一種の課題でもあると認識しており、私たちのチームでどう乗り越えるべきか、検討を始めています。

まとめ

今回は、技術負債解消プロジェクトにおけるチーム運営について、ScMの視点から振り返り、検証・改善を推進するためのアクションとして、実際にやってみたことを紹介しました。結果的に、チーム運営の検証・改善のフローが高速化され、小さな疑問や改善策であっても、速やかに次の検証に取り組めるようなチームに変化したと思います。

新卒ながらScMにチャレンジすることには当初不安もありましたが、開発者とScM双方の視点を持って取り組んだことは、チームやプロジェクトの見え方を変えるだけではなく、自分自身を客観視して見つめ直す良い機会だったと思っています。今後も、新たに技術とチーム運営双方の課題が生まれ続けます。課題に対して自律的に取り組み、さらなる成果をあげることのできるチームを目指して今後もチームで試行錯誤を続けていきます!


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