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ナレッジの淀みを解消するLGTM賞 〜小さく始めて大きく育てるコミュニティマネジメント〜

いつものおまじない

いやーFIFA ワールドカップがアツくて寝不足な日々が続いていますね。 今日も朝からポーランドvsアルゼンチン戦を観ながら一人、手に汗握っていた luccafort が「ナレッジの淀みを解消するLGTM賞 〜小さく始めて大きく育てるコミュニティマネジメント〜」というタイトルで2022年のアドベントカレンダーを始めていこうと思います。

この記事は、Money Forward Engineering 1 Advent Calendar 2022 1日目の投稿です。 なお、この記事でMoney Forward Engineers' Blog の2022年の投稿数が108記事となり、煩悩の数になります。 ということで煩悩にまみれた(?)記事をお楽しみください。

アドベントカレンダーとは?

アドベントカレンダー (Advent calendar) は、クリスマスまでの期間に日数を数えるために使用されるカレンダーである。待降節の期間(イエス・キリストの降誕を待ち望む期間)に窓を毎日ひとつずつ開けていくカレンダーである。すべての窓を開け終わると迎えたことになる。 Wikipedia アドベントカレンダーより引用。

大本となったのはキリスト教のとある宗教行事です。 これをオマージュして12月1日からクリスマスである25日まで共通の技術や組織をテーマとして毎日ブログをリレーのようにバトンを渡して完走するという技術ブログのお祭りです。

技術系アドベントカレンダーについて詳しく知りたい方はこちらのブログが大変丁寧にまとめられているのでご参照ください。 日本における技術系アドベントカレンダーの歴史

というわけでようやく本編です。

ナレッジの淀みを解消するLGTM賞とその概要

皆さんの組織ではナレッジ共有はうまく機能しているでしょうか? ぼくはここ数年技術広報として多くの会社、組織の方と会話することが増えました。 その経験から見えてきたことは数人レベルのスタートアップも大規模なスタートアップもナレッジをどう伝えるかに苦労し工夫されているということです。 今日はマネーフォワードで実際に行われているナレッジ共有の仕組み「LGTM賞」の紹介と、LGTM賞を使ってどのようにエンジニアコミュニティを活性化させているか、そのコミュニティマネジメントの一端をご紹介します。

対象読者

本記事の対象読者です。 主に以下のような方を想定して執筆を行っています。

  • エンジニア組織の情報発信が停滞している、あるいは数が少ないことに課題感を抱えている方
  • チームを跨いだナレッジの共有がうまくいっていないと悩んでいる方
  • 社内のエンジニアコミュニティを活性化させたいが思ったように盛り上がらないとお悩みの方

用語集

社内事情に特化した内容となるため、社内用語が出てきます。 以下の用語集を参考にしてください。

  • LGTM賞: 毎月発表されるLGTM賞のノミネート候補から投票で選出されたものを指す。
  • LGTM賞ノミネート(LGTM賞候補): 自薦他薦されたLGTM賞にエントリーされたものを指す。
  • メンバー: マネーフォワードの社員のこと。本記事内では多くの場合エンジニア全体を指す。
  • 運営メンバー: LGTM賞を運用保守している社員とそれをサポートしてくれている有志の社員
  • ダブル受賞: 同月内の投票数が同率1位タイを指す。同一人物がダブル受賞することもある。

LGTM賞とは?

まずはLGTM賞について簡単に解説します。

LGTM賞とはマネーフォワード 全社員 を対象とした「それテクノロジードリブンじゃん!」を表彰する社内制度です。

LGTM賞( Looks Good Technology driven To Me)とはマネーフォワードのミッション・ビジョン・バリュー・カルチャー(MVVC)のバリューの1つであるテクノロジードリブンとエンジニアにとって馴染みの深いLGTM(Looks Good To Me)をマージして作った造語です。

このLGTM賞は自薦他薦を問わずに公募をおこない、毎月月初から数日間社内メンバーの投票によって受賞者を決定しています。 LGTM賞の受賞者には金一封が贈られます。 複数回受賞する方や同月にダブル受賞する方がいたりと毎月さまざまな取り組みが自薦他薦を問わずノミネートされています。

余談ですが、LGTM賞受賞者に金一封が贈られていますが、まれに受賞者から「お金もらえるって知りませんでした!」と言われます。 でも推薦はめっちゃしてくれてたりするのでお金以外のなにかに価値を感じてもらえてるようです。

LGTM賞が生まれた背景とその目的

LGTM賞の草案はVPoEの渋谷(ryoff)が起案しました。 当時のマネーフォワードが抱えていた課題に以下のようなものがありました。

  • 組織の規模、チーム数が急成長することで個人の努力でなんとかするナレッジ共有の循環がうまく回らなくなってきた
  • ナレッジがチーム内で閉じてしまい、チーム外に浸透しないので隣のチームがなにをやっているかわからない

それまではVPoEやCTOといったマネジメント層が見通せる組織のサイズでしたが組織が急成長し、およそエンジニアの数が100名を超える前後からポツポツと課題が出始めたようです。

Pull型で情報をキャッチアップし発信していたが個人の努力でまかなえる限界を迎えたため、Push型でも情報をキャッチアップできる仕組みが必要になりました。 PushとPull両方の力を使わなければいけないくらいに成長したということですね。

LGTM賞の設計方針と運営設計

とはいえ、メンバーから情報を発信してもらうにはいくつかの課題があると考えていました。

制度を知らなければ利用できませんし、ノミネートをしてもらわなければ表彰する対象が存在しません。そして仮にノミネートしてもらっても投票してもらわなければ制度として回っているとはいえません。

  • LGTM賞を知ってもらう
  • LGTM賞にノミネートしてもらう
  • LGTM賞に投票をしてもらう

上記3つのコントリビューションをメンバーに求める必要がありました。 それを踏まえた上で運営メンバーとして工夫した点をご説明します。

点ではなく線で設計をする

こういった施策の最も苦労する点はメンバーに認知されないことではないでしょうか? 制度は作ったけれど使われない、知っているメンバーが限られる…社内制度に限らず開発でもよくある課題だと思います。 なにもしなかった場合、制度が形骸化すると考えていたので次のような取り組みを行いました。

どれか1つが効果を上げたというよりは、それぞれの効果が複合的に重なり結果につながったと感じています。

思ったよりも効果が大きかったのは「社内ドキュメントの通知機能を活用する」でした。 特に入社から間もない社員の取り組みがまとめページに記載がされ(ノミネートされ)、通知に気づくという事例を何件か観測しました。 入社後すぐに承認欲求が刺激されたり、ノミネートされた理由がやる気を刺激するなど思った以上の効果を発揮しています。

LGTM賞では「少しでもLGTMだと思った取り組みを紹介してください」とガイドラインに明記し、社内ドキュメントに毎月まとめページを作成しています。 記載内容は次のようなフォーマットにし、できるだけ必須情報が少ない状態になるようにしています。

推薦基準などは特に無く、 マジcool とか こういうの良いよね と思えるものであれば、なんでも書いてもらえると助かります

## カテゴリ(もし必要であれば追加)
- URL
  - もし必要なら説明など

ミッションを達成する土壌としての方針と文化

運営メンバーとして運用方針としていくつか注意している点に次があります。

  • 小さな成功体験を生み出す
  • テクノロジードリブンな文化を全員で作る
  • 心理的ハードルを下げるコミュニケーションをおこなう

基本的にアウトプットはコンフォートゾーンの外側に向かう力です。

他者からの称賛や評価による手助けによって自己肯定感が向上し、結果として越境する勇気が持てると仮説を立てました。 そのため、LGTM賞では些細な取り組みであっても取り上げることを重視し、妥当性や重複などの考える要素をできるだけ減らすように設計されています。 制度の目的はナレッジの共有を潤滑にすることなので質ではなく、さまざまな取り組みをキャッチアップすることにフォーカスするように設計、運用しています。

ぼくは文化とはメンバーの日々の振る舞いや想いの積み重ねであり、メンバーのチャレンジを称賛することはテクノロジードリブンな文化を支える土壌の1つだと考えています。 この考えにはVPoC(Vice President of Culture)金井と話したときに言われた「文化は誰かではなくみんなで作るもの」が大きく影響しています。

金井のnoteはこちら

いまできるコミュニケーションを最大化する

とはいえ、知らない誰かを助けることは心理的ハードルが高いです。 運営メンバーとメンバーの間にそういったハードルを生まないためにできることは普段からコミュニケーションの量を増やすことが肝要です。

  • 全エンジニアがいるチャンネルで積極的に発言・雑談する
  • 全メンバーのtimesに入る
  • メンバーの疑問に答えられることは積極的にコメントを残す

ぼくは普段京都開発拠点で働いていることもあり、リモート(遠隔地)でもできる上記のような取り組みを意識的におこなっています。

手前味噌ですが以前書いたnote記事にも似たようなことを書いています。

仕事の信頼は仕事でしか得られない、という話があります。 ※1 仕事の信頼貯金は当たり前ですが仕事に関することで貯まっていきます。 チームにJoinして効率よく信頼貯金を貯めるHowTo#とにかくチームのいろんな人とコミュニケーションする より引用。

リモートワークによってコミュニケーションの取り方は変わりましたが人間の本質は変わっていません。 運営者にこそノンバーバル(非言語)コミュニケーションの実践が求められています。

このような理由からメンバーが褒められ続けるためには、運営メンバーも継続的に活動できるような仕組みや施策に取り組む必要がありました。

LGTM賞の運用設計としての自動化と省エネ化

メンバーにできるだけ簡単に制度を利用してもらうことは大前提ですが、継続的な運営活動を維持するためには運営メンバーの負荷が高い状態が恒常化してしまうとどこかのタイミングで崩壊します。 これは制度が企画された当初から懸念されていたことであり、マネーフォワードではできる限り運営負荷を下げるための取り組みを日々行っています。

一例で紹介すると……

  • reacji channelerを用いたノミネート対象の通知を自動化
  • 社内ドキュメントにまとめられたテキストをパースしてGoogle Formを半自動的に生成
  • 全エンジニアが参加する社内イベントで自己紹介してもらうスライド作成の半自動化
  • これらの改善の取り組みを有志のメンバーと朝活でペアプログラミングをおこない実践

こういった制度や施策は日々運用し続けることで要望や改善を加えることが多々あります。 結果、始めたときは些細な手間だったものが次第に重くのしかかってくるケースがありました。 そこで朝活と称して運営を手伝ってくれている 4geru さんとペアプログラミングを毎週30分〜1時間ほどおこない日々改善を行ったり、制度の内容を改善したり細かくアップデートしています。

自動化や半自動化による運用コストを減らすことで、日々の業務を圧迫することなく運営がおこなえるように工夫をしています。 1つ1つのタスクは些細なことですが、こういった小さな課題をテクノロジーで解決していくこともテクノロジードリブンな取り組みだと考えています。 自動化や半自動化による運用コストを減らすことで、日々の業務をできるだけ圧迫することなく運営がおこなえるように工夫をしています。

まとめ

本記事ではよいことや最初からそういったことを考えて設計したかのように書かれていますが、実際にはたくさんの失敗とチャレンジを繰り返しました。 継続し続けることで無駄が削ぎ落とされ、組織の形に合わせて洗練されていった…といったほうが実態に近いでしょう。

この記事を最後まで読んだ方はおそらく、社内コミュニティに対して何か課題を持っている方だと推測しています。 コミュニティは生き物だとコミュニティ・オブ・プラクティス―ナレッジ社会の新たな知識形態の実践 では紹介されています。 まして社外のコミュニティと異なり、社内のコミュニティは全体数がどうしても限られてしまい、期待したような活動につながりにくい面があります。

理想と現実に苦しみながらも1つ1つギャップを埋め、仮設を立て検証し続ける愚直な実践力とそれぞれの施策が目指している目標を束ねる設計力がコミュニティマネージャーには求められます。 ぼくが様々な失敗をしても迷走しなかったのは誰のためにやるのか、なんのためにやるのかが明確だったことと、マネーフォワードのカルチャーにマッチしているか?という視点を持てたことが大きいです。

情報発信を推進したり鼓舞する立場は思い通りにいかないことのほうが多いでしょう。 そういった人ほど正直に「大変なので誰か一緒に改善してほしい!」と自ら発信していってほしいなと考えています。 声を上げると助けてくれる人が見つかるかもしれませんし、同じ課題感を持った仲間が見つかるかもしれません。 ぼくは声を上げ続けたことで助けてくれるメンバーを幸運なことに見つけることができました。

LGTM賞を始めた2022年7月に18件だったノミネート数ですが、地道に活動を続けることで2022年10月現在では65件に爆増していました。 それだけではなくLGTM賞のイグノーベル的存在として最近LoL賞というオマージュが有志の活動によって生まれました。 まさしくカルチャーが日々の振る舞いや想いから生まれた好事といえるでしょう。

熱狂の伝播が起こり始めるということは文化醸造が進んでいるバロメーターの1つです。

そういう強い共感を持った人は、当然のように「その輪に加わりたくなる」。その仲間に入りたくなる。それが「身内感」。 ファンベース (ちくま新書) 第4章「熱狂」される存在になる 項 より引用。

小さく試して大きく育てる、言葉でいうとたった一言ですがその裏側には様々な背景や苦労があります。 ときには失敗もします(というか大半は失敗しています)が、小さく始めることで失敗のリスクヘッジと改善のアジリティを高める効果が期待できます。 ナレッジ共有することが楽しく感じる人がマネーフォワードだけでなく、業界全体に広がってほしい…あわよくば弊社のいい社内制度を宣伝したいという欲求を満たすために本記事を執筆しました。

最後に、弊社VPoEからぼくがLGTM賞の運営に巻き込まれたときのスクショを紹介して終わりたいと思います。 雑に小さく始めて、大きく成長するために実践していこうな!

(入社後半年くらいで嬉々として巻き込まれる筆者の図。)


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